2020.06.24 13:13World eye
共和政ローマの崩壊、アラスカの火山噴火が一因 論文
【ワシントンAFP=時事】古代ローマの将軍・政治家ユリウス・カエサルが紀元前44年に暗殺されたことをきっかけに20年近く権力闘争が続き、共和政ローマの崩壊と帝政ローマの興隆につながった。(写真は灰と蒸気を噴出している米アラスカ州のオクモク火山)
史料によると、この時期、異常な寒波が続き、飢饉(ききん)も広がっている。その原因は、現在の米アラスカ州の火山噴火が原因だった可能性があるとする新たな研究結果をまとめた論文が22日、米科学アカデミー紀要に掲載された。
科学者と歴史家が集まった国際的な研究チームは、北極の氷床コア(氷床を掘削した氷のサンプル)に含まれるテフラと呼ばれる火山噴出物を分析し、地中海地域で原因不明の異常気象が続いた期間と、紀元前43年に起きたアラスカのオクモク火山の噴火との関連性を調べた。
米ネバダ州リノにある砂漠研究所所属で、論文の筆頭執筆者のジョー・マコネル氏は、「地球の裏側にある火山の噴火によってローマ人とエジプト人(が築いた共和政ローマと古代エジプト王朝プトレマイオス朝)が事実上滅亡し、帝政ローマの台頭につながった証拠を発見するのは、非常に面白い」と述べ、「2000年前でも、世界がどのようにつながり合っていたかがはっきりと分かる」と続けている。
研究チームは、2件の噴火事例の特定に成功。噴火は激しいが局所的かつ短期間で収まった紀元前45年前半の事例と、それよりはるかに規模と範囲が大きく、2年以上も火山灰が降り続けた紀元前43年の事例だ。
北極の氷床コアから見つかった2回目の噴火による火山噴出物のサンプルを地球化学分析したところ、過去2500年に起きた中で最大級の噴火、オクモク山が噴火した際の火山灰と完全に一致した。
■噴火後の2年間、気温が最も低かった時期に一致
研究チームは、北欧スカンディナビア地域の気候の歴史を刻んだ木の年輪から中国北東部の洞穴の生成物まで、仮説を裏付けるさまざまな証拠を世界中で収集した。このデータを気候モデルで分析したところ、オクモク山の噴火後の2年間、北半球の気温がこの2500年で最も低かった時期に重なっていたことが分かった。
噴火後の夏と秋の平均気温は標準を7度も下回り、秋の降雨量は欧州南部では通常の4倍に達していたと考えられる。合わせてこの時期には、平野を潤すナイル川の氾濫が起きず、その後、病気や飢饉も発生した、と米エール大学の歴史家ジョー・マニング氏は付け加えている。
この時期には、太陽の周りにかさが懸かり、太陽が暗くなったり、あるいは太陽が三つ見える幻日と呼ばれる現象が起きたりするなど、異常な大気現象が記録に残っていることも、火山の噴火で説明がつくかもしれない。ただし研究チームは、観測事例の多くはオクモク山の噴火より時期的に早いため、紀元前44年に起きたエトナ山の小規模噴火が原因かもしれないと指摘している。
マコネル氏は、共和政ローマと古代エジプト王朝プトレマイオス朝の崩壊にはさまざまな要因が絡んでいるが、中でもオクモク山の噴火は重要な役割を果たし、これまで歴史家を悩ませてきた謎を解明するのに役立つはずだと述べている。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2020/06/24-13:13)
史料によると、この時期、異常な寒波が続き、飢饉(ききん)も広がっている。その原因は、現在の米アラスカ州の火山噴火が原因だった可能性があるとする新たな研究結果をまとめた論文が22日、米科学アカデミー紀要に掲載された。
科学者と歴史家が集まった国際的な研究チームは、北極の氷床コア(氷床を掘削した氷のサンプル)に含まれるテフラと呼ばれる火山噴出物を分析し、地中海地域で原因不明の異常気象が続いた期間と、紀元前43年に起きたアラスカのオクモク火山の噴火との関連性を調べた。
米ネバダ州リノにある砂漠研究所所属で、論文の筆頭執筆者のジョー・マコネル氏は、「地球の裏側にある火山の噴火によってローマ人とエジプト人(が築いた共和政ローマと古代エジプト王朝プトレマイオス朝)が事実上滅亡し、帝政ローマの台頭につながった証拠を発見するのは、非常に面白い」と述べ、「2000年前でも、世界がどのようにつながり合っていたかがはっきりと分かる」と続けている。
研究チームは、2件の噴火事例の特定に成功。噴火は激しいが局所的かつ短期間で収まった紀元前45年前半の事例と、それよりはるかに規模と範囲が大きく、2年以上も火山灰が降り続けた紀元前43年の事例だ。
北極の氷床コアから見つかった2回目の噴火による火山噴出物のサンプルを地球化学分析したところ、過去2500年に起きた中で最大級の噴火、オクモク山が噴火した際の火山灰と完全に一致した。
■噴火後の2年間、気温が最も低かった時期に一致
研究チームは、北欧スカンディナビア地域の気候の歴史を刻んだ木の年輪から中国北東部の洞穴の生成物まで、仮説を裏付けるさまざまな証拠を世界中で収集した。このデータを気候モデルで分析したところ、オクモク山の噴火後の2年間、北半球の気温がこの2500年で最も低かった時期に重なっていたことが分かった。
噴火後の夏と秋の平均気温は標準を7度も下回り、秋の降雨量は欧州南部では通常の4倍に達していたと考えられる。合わせてこの時期には、平野を潤すナイル川の氾濫が起きず、その後、病気や飢饉も発生した、と米エール大学の歴史家ジョー・マニング氏は付け加えている。
この時期には、太陽の周りにかさが懸かり、太陽が暗くなったり、あるいは太陽が三つ見える幻日と呼ばれる現象が起きたりするなど、異常な大気現象が記録に残っていることも、火山の噴火で説明がつくかもしれない。ただし研究チームは、観測事例の多くはオクモク山の噴火より時期的に早いため、紀元前44年に起きたエトナ山の小規模噴火が原因かもしれないと指摘している。
マコネル氏は、共和政ローマと古代エジプト王朝プトレマイオス朝の崩壊にはさまざまな要因が絡んでいるが、中でもオクモク山の噴火は重要な役割を果たし、これまで歴史家を悩ませてきた謎を解明するのに役立つはずだと述べている。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2020/06/24-13:13)
2020.06.24 13:13World eye
Alaskan volcano eruption linked to fall of Roman Republic-- study
The assassination of Julius Caesar in 44 BCE triggered a nearly two-decade power struggle that led to the fall of the Roman Republic and the rise of the Roman Empire.
Historic records say the period was marked with strange sightings in the sky, unusually cold weather and widespread famine -- and a new study suggests a volcanic eruption in Alaska may have been the cause.
The paper was published in the Proceedings of the National Academy of Sciences on Monday.
An international team of scientists and historians used an analysis of volcanic ash (tephra) found in Arctic ice cores to link the period of unexplained extreme climate in the Mediterranean with the crater-forming eruption of Alaska's Okmok volcano in 43 BCE.
To find evidence that a volcano on the other side of the Earth erupted and effectively contributed to the demise of the Romans and the Egyptians and the rise of the Roman Empire is fascinating, said lead author Joe McConnell of the Desert Research Institute (DRI) in Reno, Nevada.
The advent of the Roman Empire also brought an end to the dynasty of Ptolemies, the last of the pharaohs.
It certainly shows how interconnected the world was even 2,000 years ago, added McConnell.
He and Swiss researcher Michael Sigl began investigating the matter when they found an unusually well preserved layer of ash in an ice core sample last year.
New measurements were then made on ice cores from Greenland and Russia, some of which were drilled in the 1990s and stored in archives.
They were able to make out two distinct eruptions: a powerful but localized and short-lived event in early 45 BCE, followed by a much larger, more widespread event in 43 BCE, with fallout lasting more than two years.
- Perfect match -
A geochemical analysis was performed on the ash samples found in ice from the second eruption, and it perfectly matched the Okmok event -- one of the largest eruptions of the past 2,500 years.
The tephra match doesn't get any better, said volcanologist Gill Plunkett from Queen's University Belfast.
The team gathered more supporting evidence from across the world, from tree-ring based climate records in Scandinavia to cave formations in northeast China.
This data was fed into a climate model, which suggested that the two years following the eruption were some of the coldest in the Northern Hemisphere for 2,500 years.
Seasonally averaged temperatures may have been as much as seven degrees Celsius (13 degrees Fahrenheit) below normal for the summer and autumn following the eruption, with autumn precipitation reaching as high as 400 percent of normal in southern Europe.
In the Mediterranean region, these wet and extremely cold conditions during the agriculturally important spring through autumn seasons probably reduced crop yields and compounded supply problems during the ongoing political upheavals of the period, said classical archaeologist Andrew Wilson of the University of Oxford.
They also coincided with failure of the Nile to flood the plains and the disease and famine that ensued, added Yale University historian Joe Manning.
- Strange sightings -
The eruption may also explain unusual atmospheric phenomena noted in the records, like solar halos, the sun darkening in the sky, or three suns appearing in the sky -- a phenomenon known as a sun dog.
But the authors added that many of these observations took place prior to the Alaskan eruption and could be related to the smaller eruption of Mount Etna in 44 BCE.
McConnell said that while many factors contributed to the fall of the Roman Republic and Ptolemaic Kingdom, the eruption of Okmok played an important role, and helps fill a knowledge gap that had puzzled historians.
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