2024.03.03 07:01Nation

震災の記憶、語り継ぎ模索 担い手確保へ育成講座も―「世代に応じ、アレンジ必要」

 東日本大震災の被災地で語り部の高齢化が進む中、伝承施設や学校現場では震災の記憶を次の世代に語り継ぐための模索が続く。沿岸の伝承施設は担い手確保に向けた育成講座を始め、当時を知らない若者が語り部に名乗りを上げる動きも出ている。専門家は、教訓を語り継ぐためには「世代に応じたアレンジも必要だ」と指摘する。
 震災の津波で甚大な被害を受けた宮城県石巻市。市の震災遺構事務局は昨年冬、遺構の「門脇小学校」で震災伝承の担い手確保に向けた語り部の育成講座を初めて開いた。
 講座にはこれまで被災経験を語ってこなかった人や、震災当時の記憶を持たない若者ら約20人が参加。県内で語り部として活動する遺族らが講師を務め、教訓を語り継ぐ意義や話すときの工夫などを伝えた。
 市立稲井中3年の松川聖也さん(15)は講座の一環で、他の参加者の前で語り部に挑戦した。震災当時はまだ2歳。地震の記憶はほとんどないが、手製の資料を紹介しながら「市民の1人として教訓を語り継ぎたい」と強調した。
 東京電力福島第1原発事故の影響が今も続く福島県浪江町。震災前にあった九つの小中学校は、原発事故や児童数の減少などを理由に閉校し、2018年4月に「なみえ創成小・中学校」が開校した。
 創成小の教員佐藤信一さん(58)は震災時、町内の請戸小で勤務していた。同小は津波で校舎の1階部分は浸水したが、児童ら約100人は高台に避難して全員無事に済んだ。「地域の協力があって助かった。教員だけでは無理だった」と明かす。
 創成小は毎年3月、請戸小の児童らが震災時に利用したのとほぼ同じ避難路をたどる訓練を実施している。震災の記憶を持たない子どもたちに、当時の状況を追体験してもらうのが狙いだ。
 創成小の横山浩志校長(59)は「震災を経験した町として、子どもたちが大人になった後、どこで災害が起きても対応できるようにしたい」と説明。「考える前に逃げる。生きていれば何とかなることを伝えている」と続けた。
 東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授(災害伝承学)は、震災の記憶を語り継ぐ意義について「伝え続けることで多くの命が守られる」と強調する。「身近なものと関連付けるなど、聞く側の立場に立って話す内容を選ぶことが大事だ」と話す。(2024/03/03-07:01)

2024.03.03 07:01Nation

Locals Seeking Ways to Pass on Memories of March 2011 Disaster


Residents of northeastern Japan areas devastated by the 9.0-magnitude earthquake and tsunami on March 11, 2011, continue to seek ways to pass on memories of the disaster.
   At facilities established for handing down such stories, younger generations with no memory of the disaster take part in training courses for storytelling.
   In the coastal city of Ishinomaki, Miyagi Prefecture, hit hard by the deadly tsunami, the municipal government's section for managing disaster ruins held its first such course at Kadonowaki Elementary School Ruins in late 2023.
   The event attracted some 20 participants, including those who had never talked about their experiences of the disaster and young people with no memory of the day 13 years ago.
   Bereaved families of disaster victims serving as storytellers in the prefecture explained the meaning of passing down the lessons and gave tips for telling stories.

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