能登から世界へ「信念変わらず」　地震で被災の囲碁用品老舗―早期の生産再開へ意欲・石川県穴水町

　石川県穴水町に工場を置く木製工芸品メーカー「谷口」（本社金沢市）が、能登半島地震による被災からの生産再開に意欲を示している。同社は囲碁の碁石の器「碁笥」（ごけ）の老舗で、木を素材に個性的な商品を生み出してきた。谷口正晴社長（７２）は「穴水町で世界に通用する商品を作る信念は変わらない。年内にも生産を再開したい」と前を向く。
　同社は１９４７年創業。職人がケヤキなどの丸太からわん状の器を削り出し、５０年代には年間約１万組の碁笥を生産、国内で大きなシェアを握った。
　８９年に社長に就いた正晴氏は、パソコンを使った囲碁の普及による市場の先細りを見据え、伝統的な木製品に依存しない経営を志向。独自素材の「縫える木」で制作したハンドバッグや洋服などを生み出し、衣料・雑貨店「ビームスジャパン」とのコラボ商品も誕生した。近年では台湾の百貨店などでも商品が扱われている。
　「売上高はまだわずかだが、目標の海外が見えてきた」。地震が襲ったのは、地域活性化のため、町と協力し、移住者を呼び込んで自社工場で働いてもらう計画を練っていた矢先だ。木造、築数十年の工場は２階部分が大きく崩れ、敷地内の倉庫も被災。工場前の道路にはがれきが散乱し、複数の碁笥が雪に埋まったままになった。
　「こんな時だからこそ、ネガティブにならない」。そう話す正晴氏だが、生産再開への道は険しい。崩れた工場を建て直そうにも、解体時期のめどすら立たない。自宅を失い、県外避難している従業員が戻って来られるかも不明だ。従業員の収入確保のための雇用調整助成金の手続きなど、ほかにも必要な作業は多い。
　工場移転も選択肢に浮かぶが、あくまで、出身地の穴水町内で再開を目指すのが正晴氏の信念だ。地震の影響で過疎化が一層深刻となる懸念もある中、「国内外から注目を集める製品を作り、復興と活性化に貢献したい」と話している。（2024/01/30-07:03）

The head of a long-established maker of equipment for the traditional board game "go" is maintaining his ambition to sell his firm's products worldwide, even after the firm was hit by the massive Noto Peninsula earthquake on New Year's Day.
   Taniguchi Co., based in Kanazawa, the capital of Ishikawa Prefecture, produces "goke" bowls for "goishi" stones used in the board game. Its factory, located in the Ishikawa town of Anamizu, was destroyed in the 7.6-magnitude earthquake.
   "We aim to resume production by the end of this year," said Masaharu Taniguchi, 72, head of the firm. "Our ambition to create world-class products in Anamizu has not changed."
   Founded in 1947, the firm produced around about 10,000 pairs of goke annually in the 1950s, holding a large share of the domestic market for such products. In addition to goke, the company has begun to produce unique wooden products.
   Since becoming the company's head in 1989, Taniguchi has been aiming to create a company that does not rely solely on conventional wooden products, as he believes that the goke market will shrink due to the spread of online go.