「同床異夢」の日米韓=問われる3カ国結束の意義-企画「矛と盾」(5)・完
笑顔で写真撮影に応じるポンペオ米国務長官と、その両脇で目を合わせない日韓外相-。今月2日、バンコクで行われた日米韓外相会談は、かつて「反共陣営」として共闘した3カ国のほころびが広がりつつあることを印象付けた。
朝鮮半島は冷戦終結から30年を経ても「分断」が続く。韓国の文在寅政権はそのくびきから逃れようと南北融和を進める一方、日本と激しく対立。トランプ米政権は「米国第一」の旗印の下、日韓両国に負担増を迫る。中国の台頭で半島を取り巻く力学が様変わりする中、日米韓結束の意義が改めて問われている。
◇こじれる日韓
「日本には二度と負けない」。日本政府が2日、輸出管理上の優遇対象国から韓国を除外する閣議決定を下すと、文大統領は対抗心をむき出しにした。
日韓関係は、韓国最高裁が昨年10月、韓国人元徴用工問題で日本企業に賠償を命じる確定判決を出したことを機に悪化。政府間合意に基づいて元慰安婦らの支援事業を行っていた「和解・癒やし財団」の解散や、韓国艦艇による海上自衛隊機への火器管制レーダー照射問題も重なり、亀裂が広がった。
文大統領は今月15日、日本の植民地支配からの解放を祝う「光復節」の演説で、日本に「対話と協力」を呼び掛けたが、元徴用工問題では具体的な解決への道筋を示さないまま。韓国政府は22日、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定した。
日米韓3カ国の結束を示し、北朝鮮に非核化を迫りたい米国は、日韓の対立激化に頭を悩ませる。ポンペオ長官は韓国政府の協定破棄に「失望した」と強い不満を表明。協定維持の重要性を韓国側に訴えていたエスパー国防長官も、鄭景斗国防相と電話で協議し「憂慮」を伝えた。
◇米韓に募る不信
一方、米韓関係にも亀裂が生じ始めた。文大統領は停滞する非核化交渉を尻目に、がむしゃらに南北融和を推進する。経済制裁緩和などが期待されたトランプ氏と金正恩朝鮮労働党委員長の今年2月のハノイでの会談が物別れに終わった際、「残念だった」と落胆をあらわにした。
これがホワイトハウスの不興を買った。米政府は4月に予定していた韓国との外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を一方的に中止。文大統領が同月中旬にホワイトハウスを訪れた際も、トランプ氏との単独会談は極めて短時間で終わった。
米朝対話の「仲介役」を自任する韓国に対し、米当局者からは「なぜ仲介役ではなく、米国側に立たないのか」と不満の声が上がる。別の当局者も「米政府の実務者は米韓同盟の重要さを理解しているが、文政権に対する不信、不快感は確実に募っている」と明かす。
◇共通の利益
2015年9月、北京で抗日戦争勝利70年を記念する軍事パレードが開かれた。天安門城楼で観閲する中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領の隣に、日米の制止を振り切って出席した韓国の朴槿恵大統領(当時)の姿があった。「衝撃的だった」。米外交筋は中国の影響力を見せつけた光景をそう振り返る。
太平洋進出を加速する中国に危機感を強める日米に対し、経済面で中国に依存する韓国は旗色を鮮明にしていない。日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想には支持を示しつつも、中国の経済圏構想「一帯一路」への協力も排除しない。
元韓国軍幹部は「文政権は政治目的達成のために反日感情を利用している」と反日傾斜を強める政権を批判する。一方で「大半の韓国国民は中国を友人だと思わず、中国の高圧的姿勢を快く思っていない」と指摘。ただ、駐留米軍経費負担の大幅増を要求する米政権に対する反感も強まりつつあり、文政権が外交面で八方ふさがりの状況に陥っていると分析する。
米中が新たな冷戦に突入する中、旧冷戦下で生まれた日米韓の結束は変化の時を迎えている。米当局者は「地域の安定的発展が最重要という戦略的利益では一致している」と主張する。だが、それぞれが共通の利益ではなく、国内の政治的利益を優先させ続ければ、3カ国連携は「同床異夢」に終わる。「そうなれば中国が喜ぶだけだ」と当局者は警告している。(2019/08/25-07:40)
Spear and Shield (3): 3-Way Cooperation
Japan-U.S.-S. Korea Link Being Tested amid Changing Geopolitics
In September 2015, a major military parade was held at Tiananmen Square in Beijing to mark the 70th anniversary of China's victory in the 1937-1945 war with Japan.
Among guests at the viewing deck was then South Korean President Park Geun-hye, side by side with Russian President Vladimir Putin and Chinese President Xi Jinping, presenting a shocking scene to Japan and the United States.
Park attended the Chinese event, despite calls from Tokyo and Washington on her to refrain from doing so.
While Japan and the United States are increasingly wary of China's ambitions of expanding its influence in the Pacific region, South Korea's attitude toward China remains vacillatory, as a result of its economic reliance on that country.
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