2022.02.18 07:05Nation

上皇さま、健やかに生活 10年前の手術「本当に良かった」―執刀医の天野篤さん

 上皇さまが在位中の2012年2月に心臓手術を受けられてから18日で10年。昨年12月に米寿を迎え、健やかに生活している。執刀医の天野篤・順天堂大医学部特任教授(66)が時事通信のインタビューに応じ、「ある程度健康を維持できれば良いという考え方もあるが、若い人と同じような手術をやっておいて本当に良かった」と振り返った。
 手術1週間前の検査で、3本の冠動脈のうち、2本の狭窄(きょうさく)の進行が判明。生活の質の向上を目指して手術が決まった。「状況によっては手術になると思うので、遠くに行かず待機していてほしい」。当時の金沢一郎皇室医務主管(故人)からこう声を掛けられた。執刀の際は、国民の期待を背負ったプレッシャーと「業界代表」としてのプライド、「いつも通りのことをやるだけ」という三つの感情が入り交じっていた。
 手術は予定通り終わり、3カ月後の上皇ご夫妻の英国訪問で成功を確信した。ただ、脳梗塞予防目的で心臓の左心耳(さしんじ)への処置も行ったため、手術の5年後まで緊張は続いた。
 上皇さまは手術から10カ月後の記者会見で、今後の公務について、「公的行事の場合、公平の原則を踏まえてしなければならない」と答えた。この言葉が「心にぐさっと刺さった」という。公務のため病室にワープロを持ち込み、東日本大震災の被災地など全国をくまなく訪れる姿を思い、「患者さんに差をつけずに接してきたつもりだったが、結局は自分自身のためにやっていないか」と過去の自分が揺らいだ。
 それからは、上皇さまが示した「公平の原則」に「少しでも近づきたい」との思いで仕事に励み、「真の外科医として変わった」と語る。上皇さまと直近で会ったのは19年12月23日。誕生日を祝う茶会で、「変わりなくお元気だった」という。
 退位まで「全身全霊」で続いた上皇さまの活動により、「国民はみんな心が救われた。その一つの歯車として、すごく貴重な経験をさせてもらった。この10年間は非常に充実した外科医としての時間を過ごせた」と話した。昨年3月に順大医学部教授を退任後も、後進を育てながら年約250例の執刀を続けている。今後は「アジアの人たちに自分の経験を提供したい」と語った。

 ◇天野特任教授の経歴
 天野篤氏(あまの・あつし) 1955年埼玉県生まれ。県立浦和高校卒業後、3浪して日本大医学部に入学し83年卒業。亀田総合病院や新東京病院などを経て、2002年から順天堂大医学部心臓血管外科教授。21年3月に定年を迎え、同4月から特任教授。心臓の動きを止めない「オフポンプ手術」の第一人者で、12年2月に在位中の上皇さまの冠動脈バイパス手術を執刀した。心臓手術の執刀は約9200例に上る。(2022/02/18-07:05)

2022.02.18 07:05Nation

INTERVIEW: Surgeon Happy to Have Operated on Ex-Emperor 10 Yrs Ago


Atsushi Amano, the surgeon who operated on Japanese Emperor Emeritus Akihito 10 years ago, says he is glad to have been able to carry out the surgery on the then Emperor.
   The former Emperor, who turned 88 last December, is now leading a healthy life. "Some people may say that it's enough to maintain a certain level of health (through surgery), but it was really good that I did the surgery (on the then Emperor) in the same way as that for a younger person," Amano, 66, special professor for cardiovascular surgery at Juntendo University's Faculty of Medicine, told Jiji Press in a recent interview.
   On Feb. 18, 2012, Amano conducted coronary-artery bypass surgery on the then Emperor, then 78, at the University of Tokyo Hospital.
   In a checkup conducted a week before the operation, the then Emperor was diagnosed with angina pectoris, with stenosis found progressing in two of his three coronary arteries. The heart surgery, aimed at improving his quality of life, was carried out by a joint team of the University of Tokyo and Juntendo University and took about four hours.
   At the time, Amano was told by the late Ichiro Kanazawa, who was medical supervisor for the Imperial Family, to be "on standby" in the event surgery would become necessary for the then Emperor, depending on the situation.

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