みずほ経営陣、甘い認識 経費削減優先で脆弱化―システム障害
度重なるシステム障害を起こしたみずほ銀行とみずほフィナンシャルグループ(FG)に金融庁が業務改善命令を出した。経費削減を優先しシステム関連の人員を減らした結果、運用管理体制は脆弱(ぜいじゃく)化。経営陣の認識の甘さが障害につながった。メガバンクのトップ3人が退く異例の事態となり企業風土の改革が急務だが、顧客の信頼回復への道のりは遠い。
◇人材が雲散
「極めて重く受け止めており、反省している」。みずほFGの坂井辰史社長は26日夜の記者会見で、改善命令で「日本の決済システムに対する信頼性を損ねた」と指摘されたことについて、こう語った。
みずほ関係者は「(現在の基幹システムの)開発が終わって人材が雲散した。体制が弱くなったのは事実だ」と話し、巨大で複雑な銀行システムに詳しい人材の不足が、障害多発の背景にあると認める。
みずほは2011年の東日本大震災の義援金振り込みに起因した大規模障害の反省を踏まえ、基幹システムの刷新を決定。19年に現在の「MINORI」を稼働させた。開発には富士通などのほか、約1000社の外部委託先が参加。旧3行のシステム統合という一大プロジェクトでは、顧客対応などの特別チームが立ち上がり、みずほ銀関係者は「責任者が組織をまとめ上げながら遂行した」と当時の様子を振り返る。
しかし21年3月末には、18年3月末と比べシステム人員が6割減少。通常、開発時から人員は減少するとはいえ、結果的には安定稼働を見極めないまま、システム移行で獲得した知識やノウハウが人員とともに失われていった。
◇他行に後れも
システムの運用管理体制の脆弱化について、金融庁幹部は「ほかのメガバンクと比べてみずほは収益力が低いという焦りがあり、収益が伸びなければ経費を削るしかなく、システム関連費や人件費を削減したためだ」と語る。同庁中堅幹部も「システム部門と経営者とのコミュニケーションが取れていなかった」と話し、経営陣のシステム軽視が問題の根底にあると強調する。
相次ぐ障害で、顧客の信頼は揺らいでいる。みずほFGの坂井社長は今月12日の決算発表記者会見で「システム障害の影響で口座解約も多少増加している」と明かした。現時点では収益面で大きな影響はないが、別の金融庁幹部は「システム統制力の弱さが続けば、他行に後れを取る」とみる。
◇「言われたことしかしない」
金融庁は改善命令で、みずほの企業統治の問題について「顧客への影響に対する感度の欠如」「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」があると断じた。こうした企業風土の問題は、第一勧業銀行と富士銀行、日本興業銀行が統合・再編した際の02年や11年の大規模システム障害時にも指摘されており、改革が遅々として進んでいないことが改めて浮き彫りになった。
改善命令で経営責任の明確化を求められたみずほは、経営陣を刷新する。ただ、先の金融庁幹部は、「誰かを辞めさせたことで問題が解決されるのではない」と指摘。「原因究明や再発防止に向け、どんな考えを持った人が就くかが大事だ」と話す。同庁は高度な危機管理能力を持つ最高情報責任者(CIO)の選任など、抜本的な組織改革の断行を求めている。
◇みずほの歩みと主な行政処分
1999年 8月 第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が経営統合で合意
2000年 9月 持ち株会社みずほホールディングス(HD)設立
02年 4月 みずほ銀行とみずほコーポレート銀行が発足。営業初日にみずほ銀でシステム障害
6月 システム障害でみずほグループに業務改善命令
03年 1月 みずほフィナンシャルグループ(FG)設立
06年 4月 暴力団系企業への情報流出でみずほ銀に業務改善命令
11年 3月 東日本大震災後に大規模システム障害
5月 システム障害でみずほ銀とみずほFGに業務改善命令
6月 みずほFG社長に佐藤康博氏就任
13年 7月 みずほ銀とみずほコーポ銀が合併。佐藤氏がみずほ銀頭取を兼任
9月 グループ会社通じた暴力団関係者への融資でみずほ銀に業務改善命令
12月 グループ会社通じた暴力団関係者への融資でみずほ銀に業務一部停止命令
14年 6月 委員会等設置会社に移行
17年 4月 みずほ銀頭取に藤原弘治氏就任
18年 4月 みずほFG社長に坂井辰史氏就任。佐藤氏は会長に
19年 7月 基幹システム「MINORI」稼働
21年 2月 システム障害、現金自動預払機(ATM)でカード・通帳取り込み
9月 システム障害でみずほ銀とみずほFGに業務改善命令
今年8回目の障害
11月 システム障害でみずほ銀とみずほFGに今年2度目の業務改善命令。財務省が外為法に基づく是正措置命令。佐藤氏、坂井氏、藤原氏の3トップ退任を発表(2021/11/26-22:03)
FOCUS: Executives' Lack of Awareness behind Mizuho Glitches
A series of system failures at Mizuho Bank is the result of a lack of awareness on the part of executives over their responsibility for ensuring the stability of its banking system, Japanese regulators said.
The bank and its parent, Mizuho Financial Group Inc. , were issued a business improvement order by the Financial Services Agency on Friday, leading to the unprecedented resignations of three top executives.
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