マウス卵巣組織を再生 ES細胞から実験容器内で―卵子成熟、受精で子誕生・九州大
マウスの卵巣組織を実験容器内で胚性幹細胞(ES細胞)から再生することに世界で初めて成功したと、九州大の林克彦教授や吉野剛史助教らが16日付の米科学誌サイエンスに発表した。再生した卵巣組織で成熟した卵子を通常の精子と体外受精させ、雌の仮親に移植すると、正常とみられる子が誕生した。
林教授らはこれまでに、ES細胞や人工多能性幹細胞(iPS細胞)を生殖細胞に変える技術を開発したが、卵子まで成熟させるには、マウスの卵巣に移植するか、胎児から採取した卵巣と一緒に培養する必要があった。今回、ES細胞から卵巣を構成するさまざまな細胞を生み出すことができ、卵子を含む卵巣組織をほぼ再生。ES細胞だけから実験容器内で卵子を作れるようになった。
ES細胞は胚(成長した受精卵)の一部を採取、培養して作るが、皮膚などの体細胞に遺伝子群を導入して作るiPS細胞からも、卵巣組織を再生できた。
林教授は記者会見で「今後はサルや人で実現を目指す」と話した。その上で「人のES細胞やiPS細胞からできた卵子を不妊治療に直接使うのは国の指針で禁止されているが、胎児段階の卵巣形成過程を詳しく解明し、不妊や卵巣の病気の原因を究明して治療法を開発するのに役立つ」と説明した。
一方、ES細胞などから精子を作る研究では、現時点では精子のもとの細胞にしてから精巣に入れる必要があるという。
この技術は絶滅の危機にある動物を増やすのにも使える。林教授は高齢の雌しか残っていないアフリカの「キタシロサイ」を救う事業に取り組んでおり、iPS細胞から卵子を得られる可能性があると語った。雄は死滅したが、凍結保存された精子がある。将来、受精させて近縁のミナミシロサイの雌に移植し、キタシロサイの子を誕生させる道が開けた。(2021/07/16-03:17)
Japan Team Develops Ovarian Tissues from Mouse ES Cells
A Japanese research team has successfully developed ovarian tissues from mouse embryonic stem, or ES, cells in an experimental container for the first time in the world.
An egg that grew in the tissues was fertilized in vitro with normal sperm and then transferred to a surrogate mouse. As a result, an apparently healthy offspring was born.
The study by the team, led by Kyushu University Prof. Katsuhiko Hayashi and assistant professor Takashi Yoshino, was published Friday in the journal Science.
Previously, Hayashi and others developed a technology to turn ES cells and induced pluripotent stem, or iPS, cells into reproductive cells. However, the reproductive cells had to be either transferred to a mouse ovary or cultivated together with an ovary harvested from a fetus, in order to grow into eggs.
In the latest study, the researchers successfully created ovary component cells from mouse ES cells and developed ovarian tissues including eggs from the component cells.
最新ニュース
写真特集
-
【高校通算140本塁打の強打者】佐々木麟太郎
-
【駅伝】第101回箱根駅伝〔2025〕
-
【野球】慶応大の4番打者・清原正吾
-
【競馬】女性騎手・藤田菜七子
-
日本人メダリスト〔パリパラリンピック〕
-
【近代五種】佐藤大宗〔パリ五輪〕
-
【アーティスティックスイミング】日本代表〔パリ五輪〕
-
【ゴルフ】山下美夢有〔パリ五輪〕