検討7年、最後は「強行突破」 過ぎるリミット、廃炉優先
政府は13日、東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含んだ処理水を海に放出する方針を決めた。専門家会合を2013年12月に設置して7年超に及ぶ検討を重ねたが、最後は廃炉作業を優先。風評被害を恐れる漁業関係者の反対を押し切る「強行突破」となった。ただ、原発をめぐり不祥事続きの東京電力ホールディングスに、海洋放出を計画通り実行できるか疑問符も付く。
◇宣言解除が決め手に
政府は昨年秋から海洋放出方針の決定時期を探ってきたが、漁業関係者の反発や新型コロナウイルスの感染再拡大を背景に先送りしていた。その間にも、第1原発では日々汚染水が発生。特殊な機器で浄化した処理水を保管する敷地内のタンクは来年秋にも満杯になる見通し。残る期間は約1年半。原子力規制委員会の手続きなど放出開始までの準備に2年程度必要なことを考慮すると既にタイムリミットは過ぎていた。
タンクが増え続ければ廃炉作業の妨げになるだけでなく、敷地内で漏れ出すリスクも高まる。これまでに発生した処理水は125万トンと東京ドーム1杯分を超える。仮に海に放出しなくても、地元自治体は膨大な処理水の存在自体が風評被害を生む事態を懸念。政府内では「放出の遅れが福島復興の妨げになることは許されない」(関係者)との声が出ていた。
3月下旬に東京都で緊急事態宣言が解除されたのに合わせ、政府は水面下の折衝を再び本格化させた。別の政府関係者は「機が熟すのを待っていた」と宣言解除が決断の決め手になったことを示唆する。
◇安全性に強い懸念
一方、宣言解除から間もなく新型コロナは再拡大の兆候を示し、大阪、兵庫、宮城3府県に続き、東京なども「まん延防止等重点措置」が適用された。22、23日には米国主催の気候変動の首脳会議(サミット)を控える。全国漁業協同組合連合会は「絶対反対」の姿勢を堅持していたが、政府に再び決定を先送りする選択肢はなかった。
しかし、前途は多難だ。東電は今年に入り、新潟県の柏崎刈羽原発のテロ対策や安全工事の管理をめぐる深刻な不備が相次いで発覚。原子力規制委から厳しい評価を突き付けられ、同原発の再稼働は見通しが立たなくなった。処理水は人体に影響がない水準まで薄めて放出する計画だが、全漁連の岸宏会長は東電の一連の不祥事を念頭に「安全性に極めて強い懸念を抱かざるを得ない」と訴えた。
長年の懸案に一定の区切りが付いた形だが、風評被害対策にめどは付いておらず、政府内に高揚感はない。経済産業省の担当幹部は「きょうがスタートだ」と気を引き締めた。(2021/04/13-18:58)
FOCUS: Doubts Cast over Japan's N-Plant Water Release Plan
The Japanese government's decision on Tuesday to release treated radioactive water from the disaster-crippled Fukushima No. 1 nuclear power plant into the ocean is facing doubts over whether it can be implemented as planned.
The decision to ultimately steamroller over opposition from the fisheries industry on concerns about reputational damage to local products came despite seven-plus years of deliberations since the government set up an expert panel on the matter in December 2013.
Many question whether Tokyo Electric Power Company Holdings Inc. , which has recently faced a string of misconduct cases related to a nuclear plant, has the ability to carry out the water discharge from the plant in Fukushima Prefecture, northeastern Japan.
Decisive Factor
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