政府、対中姿勢強める　海警法懸念、自民が主導

　中国海警局の武器使用権限を明記した「海警法」の施行から１カ月。日本政府が対中姿勢を強めている。沖縄県・尖閣諸島周辺で高まる中国の圧力に反発する自民党の「突き上げ」（政府関係者）が背景にある。ただ、対応を誤れば事態がエスカレートしかねず、硬軟のバランスに苦慮している。
　「私から中国の海警法に関する深刻な懸念を表明した」。茂木敏充外相は２月１８日の日米豪印外相の電話会談後、記者団にこう強調した。
　日中関係の改善基調を踏まえ、日本側は近年、名指しの中国批判を控えてきた。実際、昨年１０月に４カ国外相が会談した際、茂木氏は「東・南シナ海を含む地域情勢」に関する意見交換との説明にとどめており、対応の差は明らかだ。関係者は「自民党から『中国』とはっきり言うよう要望された」と事情を明かす。
　同党の保守系議員には、菅義偉首相の近隣外交に対する不満が根強い。「首相から中韓への強い発信が全然ない」（若手）ためだ。
　こうした空気を反映し、党外交部会などでは海警法の施行後、政府に厳しい態度表明を求める意見が続出。外務省は当初、中国を刺激しないよう、同法を「国際法違反」と断じることを避けていたが、党側に押される形で、最終的に「（国際法に）適合しているとは見ていない」と認めた。
　政府はまた、２月２５日の党国防部会などの合同会議で、外国公船が尖閣諸島に上陸目的で領海侵入した場合、海上保安庁による「危害射撃」が可能との見解を示した。防衛相経験者は「われわれがものすごく詰めた」と党側の働き掛けを認めた上で、「大きな政策転換だ」と歓迎した。
　同党内では、平時と有事の間の「グレーゾーン」に対処するため、海保と海上自衛隊の連携を強化する法整備を求める声もくすぶる。
　もっとも、中国側が領海侵入を繰り返す中、日本側は「不測の事態」を警戒。政府関係者は「日中間で偶発的な衝突が起きないか懸念している」と危機感を示した。（2021/03/01-07:38）

The Japanese government has become more critical of Chinese ships' frequent intrusions into waters around the Japanese-administered Senkaku Islands in the East China Sea over the past month since a controversial law came into force in China.
   The government faced growing pressure from the ruling Liberal Democratic Party to raise its voice against China, according to a government source.
   The government is struggling to keep a careful balance as one misstep could escalate the situation.
   The Chinese law, which took effect in early February, enables China's coast guard ships to use weapons against what Beijing sees as violations of Chinese sovereignty or jurisdiction. China claims the Senkaku Islands, which it calls Diaoyu.
   Japanese Foreign Minister Toshimitsu Motegi held a telephone conference with his counterparts from the United States, Australia and India on Feb. 18. After the meeting, he told reporters that he had expressed "grave concerns" over the Chinese law at the meeting.