石破政権、原発フル活用へ=脱炭素テコに方針転換―東日本大震災14年
東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故から14年。石破政権は「依存度を低減する」とした事故後の原発政策を大きく転換し、原発をフル活用する方針を打ち出した。エネルギーの安定供給や原発など脱炭素電源の確保を理由とするが、原発への国民の不安はいまだ払拭されておらず、理解を得られるかは不透明だ。
2011年の原発事故を受け、民主党の野田政権は12年9月、「30年代に原発稼働ゼロ」を盛り込んだ革新的エネルギー・環境戦略を策定した。だが、政権復帰した自民党の安倍政権はこの方針を転換。14年に定めたエネルギー政策の中長期的な指針となる「エネルギー基本計画」では、原発の「依存度を可能な限り低減」とする一方、「重要なベースロード電源」と位置付けた。
原発の新規制基準に基づき、15年には九州電力川内原発1号機の再稼働を初めて容認。原発回帰の姿勢を鮮明にしてきた。
昨年10月に就任した石破茂首相はもともと再稼働に慎重な立場。就任前の同8月、自民総裁選への出馬を表明した際には「ゼロに近づけていく努力は最大限にする」と強調。同9月の日本記者クラブの討論会では「省エネも最大限にやれば、原発のウエートを下げることになる」と述べていた。
ところが首相に就任すると態度が一変。今年1月の施政方針演説で「再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源」を拡大すると強調。2月に改定したエネルギー基本計画では、原発の「依存度を低減する」との従来の表現を削除し、「最大限活用する」と明記。原発の建て替え推進も盛り込んだ。
首相は「脱炭素」を旗印に長期の原発活用に道筋を付けた岸田政権の方針を踏襲し、経済官庁幹部は「画期的だ」と満足げだ。
政府は同計画でデータセンターなどの新増設に伴う電力需要増を想定し、40年度の電源構成のうち、原子力比率を2割に引き上げた。現在、全国で14基が再稼働するが、政府関係者は「建設中を含む36基すべての原発を稼働すれば達成できる」と強調する。
政府内には、再稼働が進む地域の電気料金が安いことを踏まえ、「物価高で国民の理解も広がっている」(関係者)との見方もある。
石破政権の原発政策を巡る国会での議論は低調気味だが、一部野党からは「国民への裏切り」「原発回帰」との批判も上がる。エネルギー基本計画に関するパブリックコメント(意見公募)では「事故の教訓を生かしていない」などと反対意見が相次いだ。原発への不信は依然として根強く、不安の解消がなお課題だ。
[時事通信社]
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