石破首相、夫婦別姓で発言後退=通称使用拡大、保守派に配慮
石破茂首相が今国会で焦点の一つとなる選択的夫婦別姓制度導入の是非を巡り、「折衷案」として旧姓の通称使用を法的に広げることも選択肢とする考えを示した。別姓導入に前向きな立場だったが、後退させた形。保守派を中心に自民党内で反対が根強く、配慮が必要だと判断したとみられるが、意見集約はなお見通せない状況だ。
発言があったのは26日放送のネットメディア「ReHacQ(リハック)」の番組。首相は各種世論調査で同姓維持や別姓容認より旧姓の通称使用拡大の支持が多いと指摘し、「どちらの考え方にも偏れないなら、折衷案もあり得べしかと思う」と述べた。27日の衆院本会議答弁では「家族の一体感や子どもへの影響」も論点だと指摘した。
昨年の自民総裁選の際、首相は同姓を強いることによって生じる「不利益」は解消する必要があるとの認識を表明。「かねて個人的には選択的夫婦別姓に積極的な姿勢を持っている」と明言していた。
選択的夫婦別姓は法制審議会が1996年に導入を答申したが、自民内で「家族制度が崩壊する」との異論が強く、進まなかった。昨年、経団連が早期導入を求め、衆院選で積極派の立憲民主党などの勢いが増したことで議論が活発化した。
自民も2月に検討を本格化させ、公明党と調整する方向。首相は27日の答弁で「いつまでも結論を先延ばしにしてよい問題ではない」と語った。
旧姓の通称使用は保守派も容認。森山裕幹事長ら執行部はそれを「落としどころ」とみており、首相が持論を封印して乗った格好だ。少数与党で厳しい政権運営を続ける中、あつれきを避けたいとの空気が漂う。
ただ、自民は小泉進次郎前選対委員長ら推進派も一定程度抱える。公明は導入を強く迫っており、難航は必至だ。自民中堅は「これから議論を始めるのに首相は先走り過ぎだ」と批判した。
立民は選択的夫婦別姓を導入する民法改正案を春ごろに提出する方針。他の野党に加えて公明の賛同を求め、自民に揺さぶりを掛ける構えだ。立民の野田佳彦代表は27日の衆院本会議で、「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領が選挙戦中に掲げた政策を次々と実行に移しているとした上で、「首相もたまには総裁選中に言ったことの実現に一歩踏み出してはいかがか」と皮肉った。
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