執念の粘り、大関飛ばす=尊富士、恩返しの場所―大相撲初場所
鮮やかな逆転勝ちだった。尊富士は琴桜に相手得意の右四つを許し、追い込まれた土俵際。右手でタイミング良く大関の左肘を突き上げると、体勢を崩したその巨体が飛んだ。
「最後まで諦めなかった」。大栄翔に敗れた11日目の取組後。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)に、「強くなりたくないのか」と厳しい言葉を投げ掛けられた。「気持ちのない相撲を取ることはできない」と尊富士。引いて墓穴を掘った黒星から一転、執念の粘りを発揮した。
3敗で優勝争いに踏みとどまった。トップと1差までに5人が並ぶ混戦の中、八角理事長(元横綱北勝海)は「一度優勝している気持ちの余裕はあると思う」とみる。昨年の春場所には110年ぶりの新入幕優勝を遂げている25歳。周囲の評価は高い。
初優勝した際、右足首を痛めた14日目の夜に、出場へと背中を押してくれたのが横綱照ノ富士だった。尊富士は「言葉では言い表せない存在。結果を残すことが恩返し」と心に決めている。尊敬する兄弟子が引退した特別な場所で、2度目の賜杯獲得を報告したい。
[時事通信社]
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