イチローさんの恩師「よくやった」=愛工大名電高元監督の中村豪さん
イチローさんの高校時代の恩師、愛知・愛工大名電高元監督の中村豪さん(82)は家に飾ってあるサインを眺め、ほほ笑んだ。16日に日本の野球殿堂入りを果たした教え子について「よくやった。ここまで大化けするとは思わなかった」。日本時間22日に発表される米野球殿堂にも、日本人で初めて入ることが確実視されている。
イチローさんをスカウトした際に言われた言葉が忘れられないという。「甲子園じゃなくてプロに行きたい」。そんなことを話す中学生は初めてだった。体は細かったが高校1年時から打撃センスは飛び抜けており、「中前打ならいつでも打てる」と豪語していたことも。中村さんは「変わっている。宇宙人」と評す。
何よりも印象的なのは一人で黙々とバットを振る姿。ある時、野球部で「幽霊が出た」とのうわさが広まった。それが深夜に素振りをするイチローさんだったのは今も語り草だ。3年夏の愛知大会で負けて甲子園出場を逃した後も、毎日グラウンドに来て練習したのはイチローさんだけだった。
中村さんが愛工大名電高の監督だった20年間、素質がありながら伸びなかった選手もいた。「イチローとの違いは人間性。プロに行くんだ、という心意気がすごかった」。この精神力は「天性のもの」と表現する。
イチローさんは日本人野手として初めて米大リーグに挑戦し、パワーヒッターが多い中で安打製造機として成功した。「歴史を変えた」と中村さん。「大谷(翔平)が出て存在が薄まった」と笑って話すが、イチローさんが道を切り開いたからこそ、後に続く選手がいる。「向いているか分からないが、監督の姿も見てみたい」と思いを巡らせた。
[時事通信社]
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