訴追団の内乱罪撤回が物議=大統領弾劾、14日初弁論―韓国憲法裁
【ソウル時事】韓国の憲法裁判所は14日、尹錫悦大統領の弾劾審判の初弁論を開く。審理を前に、検察役を務める国会の訴追団は刑法上の内乱罪を訴追事由から撤回し、尹氏による「非常戒厳」宣言の違憲・違法性に立証を絞ると表明。尹氏側は内乱罪が成立しないなら訴追を却下すべきと反発している。
2024年12月14日に国会で可決された尹氏の弾劾訴追案は、戒厳宣言が要件に欠き、政治活動を禁止した布告令が憲法や戒厳法に違反したなどと主張。国会に軍や警察を投入したことが「刑法上の内乱罪に該当する」と明記していた。
しかし、国会訴追団は今月3日、刑法上の内乱罪の部分を「事実上撤回する」と明らかにした。合同捜査本部が尹氏を内乱容疑で捜査しており、「有罪か無罪かは刑事裁判で判断されるだろう」と強調した。
争点を絞るのは早期に審判を終える狙いがあるとみられる。最大野党「共に民主党」の李在明代表は公職選挙法違反事件で被告となっており控訴審を控える。有罪が確定すれば大統領選に出馬できなくなるため、弾劾実現を急ぐ考えとされる。
一方、尹氏の弁護団は「内乱罪が審判の最も本質的で重要な要素だ」と批判。「内乱罪が成立しないなら弾劾訴追は間違っていたことになる」と訴えた。与党「国民の力」トップの権寧世非常対策委員長も「弾劾訴追案の主要内容が変更されるなら国会に再び問うべきだ」と指摘した。
尹氏は初弁論出席を見送る方針。弁護団は13日、期日が一方的に決められたとして憲法裁に異議申し立てを行った。また判事1人について「革新系の法律研究会に在籍しており、公正な審判を期待しにくい」と訴え、審判からの排除を求めた。
世論調査機関「韓国ギャラップ」の10日の発表では尹氏の弾劾に賛成が64%、反対が32%。賛成は24年12月に比べ11ポイント下がり、国民は内乱罪撤回に批判的とみられる。
刑事上の責任の有無を含めて判断するか、憲法・法令違反だけに論点を絞るかは過去の弾劾審判でも対応が割れており、憲法裁関係者は「われわれが判断する」と説明する。04年の盧武鉉大統領(当時)の弾劾審判では刑事上の責任も検討し、棄却を決定した。一方、17年の朴槿恵大統領(同)の弾劾審判では刑事上の責任の判断を行わず、権限乱用といった憲法・法令違反だけを検討して罷免を決めた。
[時事通信社]
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