「夫婦別姓」転機の年か=自民じわり導入論、首相判断焦点―財界期待、保守層警戒
2025年は家族法制度の転換点となる可能性が出てきた。選択的夫婦別姓を求める声が世論や財界に広がる中、自民党にも導入論がじわりと拡大。国会の勢力図が大きく変わり、審議が本格化する兆しも見られる。保守層はなお慎重論が強く、石破茂首相の判断が焦点となる。
首相は24年12月24日の記者会見で、野党のほとんどと公明党も選択的夫婦別姓に賛成である点に言及。「自民党として議論の頻度を上げ、熟度を高めることに力を入れたい」と語った。9月の党総裁選では導入に前向きな考えを示している。
選択的夫婦別姓制度は、夫婦が望む場合はそれぞれ結婚前の名字を称することを認めるもの。1996年に法制審議会(法相の諮問機関)が導入を答申。野党各党がこれまで民法改正案を出したが、廃案となってきた。
だが、衆院選で自公が過半数を割り、民法改正を扱う衆院法務委員会の委員長ポストが立憲民主党に渡った。立民幹部は「通常国会は実現の好機」と断言。他の野党と法案を共同提出する構えだ。
日本維新の会は旧姓使用に法的効力を持たせることを衆院選で公約。ただ、前原誠司共同代表は先週、選択的夫婦別姓に賛意を表明し、改めて党内に諮る考えを示した。国民民主党も積極派だ。
国会の外に目を移せば、経団連が24年6月に選択的夫婦別姓制度の早期実現を提言。報道各社の世論調査でも賛成意見が目立ってきた。
公明党の斉藤鉄夫代表は12月18日、ラジオ番組で「もう決断する時だ」と強調。この後、首相に会い、(1)戸籍制度改革(2)子どもの姓選択の方法―について自公の実務者レベルで検討を始めるよう直談判した。
呼応するように、自民にも動きが出てきた。賛成派の現職閣僚は論点を首相に伝えたとし、「党議拘束は外すべきだ」と主張。ある自民関係者は首相が「結論を出したい」と話していたと明かす。
とはいえ、党内論議は一筋縄ではいきそうにない。「岩盤保守層」を中心に「家族の連帯が損なわれる」との警戒感が拡大。若手は「強引にやるなら首相を引きずり降ろす」と息巻く。
野党には、夏の参院選や東京都議選を見据え、自民内の足並みの乱れを誘発する狙いも垣間見える。立民の野田佳彦代表は12月27日、選択的夫婦別姓制度について「しっかり成果を挙げ、都議選や参院選につなげる」と述べた。
首相が議論を主導すれば、保守層に総裁選以来くすぶる首相への不満が噴出し、政局につながる可能性もある。自民幹部は「賛否を問うだけでは党が割れる」と指摘。旧姓の通称使用を広げる新法制定など妥協案を模索する考えを示した。
◇選択的夫婦別姓を巡る主な動き
1996年 2月 法制審議会が導入を答申
2021年 6月 最高裁大法廷、夫婦同姓規定について15年に続き合憲判断
22年 6月 立民、国民民主などが導入に向けた民法改正案を国会提出。廃案に
24年 6月 経団連が早期実現を提言
7月 自民、約3年ぶりに党内論議再開
9月 自民総裁選で選択的夫婦別姓制度が主要テーマの一つに
10月 衆院選で自公過半数割れ
国連女性差別撤廃委員会が導入を勧告
11月 衆院法務委員長に立民の西村智奈美氏就任
25年 1月 通常国会召集。野党が民法改正案提出へ
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