石油、災害時の「とりで」に=給油所減り、備蓄も課題―能登地震1年
発生から1年となる能登半島地震では、道路が寸断され孤立した地域などで給油所がガソリンや灯油などの供給を続けた。石油は用途が広く容器で持ち運べるため、災害時の「最後のとりで」と位置付けられる。ただ、昨今は需要の減少に伴い製油所や給油所の閉鎖が相次いでおり、大規模災害に備えた供給体制の確保が課題となっている。
元日の震災直後、被災地の給油所は自家発電設備を稼働。長蛇の列を作る被災者や消防などの緊急車両に給油を続けた。経済産業省によると、七尾、輪島、珠洲3市と志賀、穴水、能登3町で69カ所ある給油所の半数以上が1週間以内に復旧。7月末時点で62カ所が営業可能になったが、一部は現在も休業している。
全国の給油所は1994年度末のピーク時の6万カ所超から2023年度末には約2万7000カ所に減少。零細企業が多く、後継者難などの問題を抱える。一方、東日本大震災や熊本地震の教訓から、半数以上が自家発電設備を備えるなど災害対策を強化してきた。
能登地震では石油元売り各社も運送業者と連携し、灯油のドラム缶などを輸送。グループの出荷施設が被災したENEOSホールディングスや出光興産は、近隣拠点を活用し供給を維持した。
石油の供給拠点が減少する中、経産省は地域の燃料備蓄を促すため、24年度補正予算で給油所のタンクの更新や一定量の保管を補助する事業に121億円を計上した。事業者で組織する全国石油商業組合連合会の広報担当者は「災害対応で在庫は必要だが、経営への負担は大きい」と説明。熊本地震翌年の17年に始まった、各家庭に灯油を備える「プラス1缶運動」などを呼び掛けている。
[時事通信社]
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