課税最低限、なお低く=「壁」見直し、主要国に見劣り―税制改正

自民、公明両党は2025年度税制改正で、所得税の課税最低限「年収103万円の壁」を見直し、計20万円引き上げると決めた。所得税の基礎控除と給与所得控除の合計額は123万円へ、これまでの1.2倍に引き上げられるとはいえ、依然として主要国に見劣りする低い水準にとどまる。
米国やドイツは、日本の課税最低限に相当する金額が物価上昇率に連動する制度を採用しており、近年の物価上昇で大きく引き上げられた。日本は現行の103万円になった1995年以降、30年間も調整してこなかったのに対し、米国は96年から2024年の間に2.23倍へ引き上げた。英国はリーマン・ショック後、低所得者に配慮して物価上昇率を大幅に超える上乗せを実施した。
今回、与党が決めた123万円は、食料や光熱費など生活必需品を中心とする「基礎的支出」の消費者物価上昇率を基にはじき出した。一方、国民民主党は、最低賃金の上昇率に合わせて178万円にするよう求めていた。
自民党の宮沢洋一税制調査会長は最低賃金について、「政策的に引き上げてきた」との理由で参考指標にするのは不適当だと指摘する。別の税調幹部も「諸外国が採用しているような恣意(しい)的ではない指標で物価上昇分を調整することが大事だ」と主張する。
日本は長らくデフレが続いてきたが、ここ数年は物価高が続き、国民民主の主張をきっかけに課題が顕在化した。「壁」の高さはどれぐらいが適当なのか、今後も議論が続きそうだ。
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