キオクシア、続くいばらの道=「NAND」一本足に限界も

経営危機に陥った東芝から分社、売却されたキオクシアホールディングスが18日、悲願の株式上場を果たした。競争力強化に向けた新たな資金調達手段を得た格好だが、現状、主力製品はデータの長期的な保存に使われる「NAND型フラッシュメモリー」のみ。群雄割拠の半導体メモリー業界は再編観測も根強く、今後もいばらの道が続きそうだ。
キオクシアの2024年9月中間連結決算(国際会計基準)は純損益で1760億円の黒字を確保した。1891億円の赤字だった前年同期から劇的に回復したが、NANDが使われるスマートフォンなどの需要動向に業績が大きく影響を受ける事業構造は変わっていない。
キオクシアは供給先として、生成AI(人工知能)の普及で増加するデータセンターに期待する。しかし、足元でAI特需の恩恵を受けているのは、一時的なデータの書き込みや読み込み機能を持ち、転送速度に優れる「DRAM」。これを積み重ねた「HBM」と呼ばれるメモリーは画像処理半導体やサーバー向けの需要が過熱している。
競合する韓国のサムスン電子やSKハイニックスはNANDとDRAMの両方を製造しており、業界関係者は「DRAMを事業として手掛けない限り、キオクシアに将来はない」と分析する。
キオクシアも手をこまねているわけではなく、NAND以外の新技術の研究開発を進める。「うまくいけば新しいビジネスの柱になる」(早坂伸夫社長)と見込むが、事業化にはまだ時間がかかる見通しだ。
キオクシアに間接出資するSKは、最先端DRAMの協業相手として取り沙汰される。広島県に生産拠点を持つ米マイクロン・テクノロジーもパートナー候補に名前が挙がるほか、SKの反対で頓挫した米ウエスタンデジタルとの統合案もくすぶる。
競争が激化する半導体メモリー業界では、単独にせよ、他社との協業にせよ、生き残りを図るには「上場しただけでは意味がない」(先の関係者)と指摘される。具体的な成長戦略を示せるのか、これからが正念場となる。
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