求心力となった「野心」=かつてないセーヌ開会式―パリ五輪
7月26日の開会式はセーヌ川を舞台にパリらしさが詰め込まれた4時間だった。夏季五輪大会で初の競技場外での実施。観光名所が両岸に並ぶ川を選手団がボートで下り、式典をエッフェル塔前の広場で行うなどかつてないものだった。
成功の裏には大会組織委員会のトニ・エスタンゲ会長(46)の存在があった。同会長は口癖のように強調していた。「私たちには野心がある。誰も成し遂げていないことをわが国でしたい」。この「野心」が大きな求心力となった。
セーヌ開会式の最大の障壁は安全面だった。フランスは治安問題を抱え、2023年には国内でテロが2件発生。警戒レベルは最高まで上げられていた。屋外での実施に反対意見は強まる一方だった。
会長は組織のトップとして信頼関係を大切にしてきた。「フランスには、脅威がある中でイベントを成功させてきた歴史がある」。逆風が吹いても警備への信頼を口にし、実現への姿勢を崩すことはなかった。
この言葉に応えるようにパリ警視庁が前代未聞の規模で警備を計画するなど、各所が動いた。五輪直前に内閣が総辞職し政治的な混乱が生じたが、政府も五輪最優先の姿勢を表明。厳戒態勢の下、見事に一大イベントをやり切った。
パリのラバダン副市長は「絶対に達成したいという強い野心があった」と明かし、当時のウデアカステラ・スポーツ相は「トニがいたから野心を保つことができた」。若きリーダーの壮大な野望がフランスを一つにし、100年ぶりとなったパリでの祭典をつくり上げた。 (パリ時事)
[時事通信社]
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