早慶戦、父の前でアーチ=清原「野球が家族つないだ」―大学野球
大学最後となる伝統の早慶戦で見せた意地だった。東京六大学秋季リーグ戦が大詰め。11月9日に行われた1回戦の六回、慶大の清原正吾が初球を捉えた打球は、鮮やかな放物線を描いて左翼席中段に突き刺さった。この3号ソロだけでなく計4安打。優勝目前だった早大相手の勝利に貢献した。翌10日の2回戦も勝ち、目の前での胴上げを阻止。試合を終えた清原は「挫折もしんどい時期もあった。ここまでやってこられたのは、ずっとそばにいてくれた家族や野球部のみんなのおかげ」と声を詰まらせた。
プロ野球の西武、巨人などで活躍した父、和博さんは毎試合、神宮球場へと足を運んだ。息子の勇姿を見届けた和博さんは「苦しいことがたくさんあった中、よくここまで頑張った」とねぎらった。
父の影響で野球を始めたのは小学生の時。両親が離婚した後、中学、高校では違うスポーツに励んだ。慶大入学後に野球を再開。なかなか試合に出られなくても謙虚な姿勢を忘れず、地道に練習を積み重ね、今春ついに4番の座をつかんだ。
期待と責任を感じていた頃、思い浮かんだのはバットのグリップを余らせて持つ、父の打撃フォーム。「気持ち的にも余裕が持てるし、コンパクトなスイングができる」。秋にリーグ戦初本塁打をマーク。父の姿が重なるようにも見えた。
早慶戦には母の亜希さんも観戦に訪れ、清原は「野球が僕の家族をまたつないでくれた」と感謝の気持ちを語った。プロ野球のドラフト会議で指名はなく、このまま野球人生に終止符を打つ。慶大で打った三つのホームランボールは父と母に渡し、最後の一つは慶応高から慶大に進学する弟の勝児へ。「これを原動力に(勝児には)大学生活を頑張ってもらいたい」。野球への思いを弟につなぎ、バットを置く。
[時事通信社]
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