「トランプ前夜」外交攻勢=経済停滞、内政に課題―中国・習近平氏
【リオデジャネイロ時事】中国の習近平国家主席はペルー、ブラジルで開催された一連の国際会議の日程を終えた。来年1月に退任するバイデン米大統領のレームダック(死に体)化が指摘され、各国がトランプ次期大統領の再登板に戦々恐々とする中、中国の国際貢献をアピール。「頼れる大国」として存在感を誇示した。ただ、攻めの姿勢が目立った外交とは対照的に、内政では経済の停滞をどのように解決するか道筋は見えていない。
「われわれは保護主義に反対し、経済問題の政治化や人為的にグローバル市場を分断することは避けるべきだ」。ブラジル・リオデジャネイロで18日に開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の席上、「米国第一」を掲げるトランプ氏を念頭に習氏は力説した。
米欧主導の国際秩序の変革を目指す習政権は、かねて新興・途上国との連携強化を図ってきた。米国の政権移行期で「力の空白」が生じることが予想され、トランプ氏の再来に各国が疑心暗鬼を募らせている。こうした現状は、習氏にとっては外交的好機と言える。
習氏はブラジルに先立ち訪れたペルーで、中国主導で太平洋岸チャンカイに建設された巨大港の開港式にオンラインで出席。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」が、米国の「裏庭」とも呼ばれる地域に浸透している現実を見せつけた。
習氏は、中国と懸案を抱える国との関係修復にも注力。期間中、石破茂首相をはじめとして韓国や英国、オーストラリアの首脳らと個別会談した。議長国ブラジルは習氏を国賓待遇とし、サミットの日程終了後、個別に首都ブラジリアに招待して厚遇した。
一方、中国国内に目を転じれば、不動産不況に歯止めがかからず、景気低迷が長期化。人々の間に「社会への不満」が広がっているとみられ、凶悪事件が多発している。習氏の外遊とほぼ同時期に、広東省珠海市で男が自動車で人をはね78人が死傷する事件などが起きた。
中国人民大の時殷弘教授は「トランプ氏の孤立主義が中国に有利に働くという分析がある。しかし、結局は空虚な外交上の利益を得るだけで、中国の財政はさらに逼迫(ひっぱく)に向かい、国民の不満はますます大きくなるだろう」と悲観的な見方を示した。
[時事通信社]
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