国民案「丸のみ」で関門突破=石破首相、政権安定なお見えず
自民、公明両党と国民民主党は20日、所得税の負担が生じる「年収103万円の壁」の引き上げ方針を盛り込んだ経済対策の取りまとめで合意した。少数与党を率いる立場の石破茂首相は、国民民主の主張をひとまず「丸のみ」することで、28日召集の臨時国会に向けた最初の関門を突破した格好だ。ただ、具体化の道筋はなお不透明で、地方からは税収減への懸念が続出。政権運営は綱渡りが続く。
「政策決定、国会運営で野党の意見を聞き、協力することが基本となる。今回はひな型ではないか」。自民の小野寺五典政調会長は20日、国民民主との合意に胸を張ってみせた。
「103万円の壁」の扱いは、経済対策を巡る3党協議で最大の焦点だった。政策ごとに連携する「部分連合」を否定しない国民民主のつなぎ留めが、臨時国会や来年の通常国会を乗り切る上で絶対条件と目されるためだ。
合意は、国民民主が長年訴えてきたガソリン減税にも言及。同時に、経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案の年内成立や、25年度予算案に関する3党の「継続的な取り組み」の重要性など、与党が重視する内容も盛り込まれた。
もっとも、見直しの議論は年末にかけて続く税制改正が本番だ。にこやかに合意をアピールした3党だが、国民民主幹部は「補正予算案への賛成は約束していない」と、税制調査会の議論を見極める考えを強調。一方、自民内では「税制がおかしくなれば影響は甚大だ」(幹部)との消極論が根強く、臨時国会の補正審議は早くも波乱含みだ。
「103万円の壁」の見直しに伴う税収減は7兆~8兆円とも試算されるが、当面の政権安定を優先した結果、対応は手付かずのまま。特に、地方自治体は大幅な減収に見舞われかねず、20日の全国町村会会合で吉田隆行会長は「町村財政運営に支障が生じないよう強く求める」と危機感をあらわにした。
「地方創生で交付金を倍増すると言いつつ、『壁』見直しも約束する。まるでポピュリズム(大衆迎合主義)だ」。政府関係者はこう漏らした。
[時事通信社]
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