経済対策・来年度予算に影=政局混乱、歳出圧力も【24衆院選】
衆院選での自民、公明両党の過半数割れは、来月にも策定予定だった経済対策など、重要政策の行方に影を落としそうだ。石破茂首相は政権維持に向けて野党の協力を取り付けたい考えだが、物価高対策を巡る調整は難航が予想される。歳出圧力は一段と強まるとみられ、政局の混乱が長引けば年末に終わるはずの来年度予算案の編成作業が大幅に遅れ、国民生活に打撃を与えかねない。
首相は28日の記者会見で、エネルギーや食料品価格の高騰に苦しむ家計の支援を優先課題に位置付け、「党派を超えて優れた方策を採り入れ、意義のある経済対策、補正予算を実施していくことが必要だ」と強調した。与野党が政策協力に踏み出せば、選挙戦の前から検討が始まっていた経済対策の中身は大きく左右される。
首相は会見で、賃上げの恩恵を受けにくい低所得世帯向けの給付金や、地域の実情に合わせた重点支援地方交付金の必要性を訴えた。一方、連携相手として取り沙汰される日本維新の会や国民民主党は消費税減税などを掲げた。
来夏の参院選をにらみ、大敗を喫した与党の歳出圧力が強まるのは必至。野党の要求も丸のみすれば、これに拍車が掛かる。首相は選挙戦で経済対策に関し、昨年度の約13兆円を上回る補正予算案を編成すると言及したが、経済官庁幹部は「野党が加われば、さらなる膨張は避けられない」と警戒する。
今回の衆院選で、与野党は大型予算編成や減税などを競い合い、中長期の成長戦略や財源論はほとんど置き去りにされた。財務省が28日に開いた財政制度等審議会(財務相の諮問機関)では、複数の委員が「経済再生と財政健全化の両立」を徹底するよう求めたという。
来年度の予算編成・税制改正では、防衛費増額に伴う増税の開始時期も焦点の一つ。首相は「年内決着」を掲げたが、野党は増税に反対している。こうした協議が長引けば、2015年度予算案以来の越年編成となりかねない。
今年度中に改定予定のエネルギー基本計画は、原発依存度に関する記述の扱いが議論を呼ぶ可能性がある。躍進した立憲民主党は原発利用に慎重な立場。政権の枠組み次第では、調整に時間がかかりそうだ。
[時事通信社]
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