侵略戦争「様相変わった」=北朝鮮参戦、日本の安保に影響―空路近く再開へ・松田前駐ウクライナ大使
ロシアの侵攻が続くウクライナで日本政府代表として約3年にわたり外交を指揮した松田邦紀前駐ウクライナ大使(65)が23日、東京都内で取材に応じた。北朝鮮の事実上の派兵で「侵略戦争の様相が変わった」と指摘。「北朝鮮が朝鮮半島で冒険主義的な行動に出る危険性が生まれた」と述べ、日本の安全保障に深刻な影響をもたらす恐れがあると強い懸念を示した。
松田氏は2022年2月から2年半が経過したロシア侵攻は「21世紀型の主権国家同士の戦争」との認識を示した。その上で「第2次世界大戦の反省から人類が築いた国際秩序を、守るべき責任のある国連安保理常任理事国がないがしろにし、破壊した」とロシアを強く非難した。
北朝鮮部隊がロシア軍と共同訓練を行っているとされることには「事実上の参戦だ」と明言。「朝鮮戦争後、軍事作戦の経験を持たない北朝鮮が(軍事力の向上につながる)最新の実戦経験を得ることになる」と、深刻に受け止めるべきだと警告した。
さらに、ロシアが極東で北朝鮮と連携し、現状変更を試みる可能性があると憂慮した。東アジアの安全保障が脅かされることになり、日本は米国や韓国と対応の準備を急ぐ必要があると強調。ウクライナ侵攻は「日本の問題であり、日本が永続的な平和と繁栄を守ることにつながる」と捉えるべきだと述べ、ウクライナを支えることは「われわれの未来への投資だ」と語った。
来月の米大統領選では、ウクライナ支援に消極的なトランプ前大統領が当選する可能性もある。松田氏は「トランプ氏が当選したら大変なことになるという感じはウクライナ政府内にない」と説明。トランプ氏、ハリス副大統領のどちらが当選しても「ウクライナは自助努力を続けるという印象を持った」と話した。
ウクライナ復興を巡っては「支援から貿易・投資への流れは変わらない」と述べるとともに、ロシア侵攻後に運航が停止された民間航空便について、ウクライナ政府が西部リビウ発着便の再開を検討していると明らかにした。日本とウクライナ間では新たな租税条約、投資協定が整備される見通しで、両国民間企業の動きが活発化することに期待感を示した。
[時事通信社]
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