勢い欠く共和制移行論=英国王迎え、政権も棚上げ―豪
【シドニー時事】チャールズ英国王は22日、オーストラリア訪問の主要日程を終えた。即位後初の訪問を機に、豪州では英国王を国家元首とする立憲君主制が国民に再認識され、共和制への移行を求める議論は勢いを欠いている。アルバニージー労働党政権も、物価高騰や先住民の地位確立を巡る憲法改正案否決で求心力が低下する中、共和制の問題を事実上、棚上げしている。
ニューズ・コープが今月公表した世論調査結果によると、共和制移行への賛成は33%にとどまり、反対が45%で上回った。1999年の国民投票で共和制移行案が否決された時よりも、賛成の割合は低くなっている。
アルバニージー首相は共和制論者だが、21日の国王歓迎行事の式辞で、持論を封印し「(国の)制度は、あなたの手の中で安定している」と述べた。来年5月までに行われる総選挙をにらんで、政権は物価対策など緊急性の高い課題に注力しており、共和制移行は「将来的課題」と位置付けている。
しかも昨年10月には、先住民の地位明記や代表機関創設を定めた改憲案が6割の反対多数で否決された。賛否の割れる共和制を巡って再び国民投票を行えば、国民の分断を一層深めかねず、政権には現時点で踏み込む余力がない。
国王は22日、最大都市シドニーで先住民との交流行事に参加し、植民地支配時代の迫害の歴史を踏まえて和解に努めた。共和制に関し、英王室は「豪国民が決めること」と不介入の立場。豪国民と良好な関係を築きたい考えだが、前日に先住民のリディア・ソープ上院議員が国王の面前で「(英国人は)大虐殺をした。あなたは私たちの王ではない」と叫ぶなど、和解の難しさも浮き彫りとなった。
国王は23日からサモアを訪れる。
[時事通信社]
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