安保厳しさ、与野党共有=防衛増税が対立軸に―各党公約・防衛力整備【24衆院選】
東・南シナ海で軍事活動を強める中国。ウクライナ侵略を続け、核の脅しを繰り返すロシア。ウクライナへの大規模派兵が伝えられる北朝鮮―。27日投開票の衆院選で、与野党は安全保障環境の厳しさに関する認識をおおむね共有し、抑止力向上への主張を展開している。一方、政府方針の防衛増税に野党は軒並み反対する。選挙結果は今後の防衛政策や財源論に影響を与える可能性がある。
◇「3正面」にらみ
中国は過去30年間で国防費を30倍超に増やし、不透明な軍拡にまい進。ロシアは日本周辺で中国軍との共同活動を活発化させ、北朝鮮は核・ミサイル開発などで朝鮮半島の緊張を高める。これらの「3正面」をにらみ、岸田前政権は2022年末に安全保障関連3文書を策定。防衛費を5年間で総額43兆円と大幅に増やし、反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有する方針を決めた。同志国との連携のため、殺傷能力を持つ装備品輸出の要件も緩和した。
一方、恒久財源確保のための防衛増税は先送りされたままだ。石破茂首相(自民党総裁)は「年内決着」を掲げており、年末策定の税制改正大綱が焦点となる。サイバー分野では、平時から通信を監視して攻撃を防ぐ「能動的サイバー防御」の法整備も宙に浮いている。
自衛官不足も深刻で、昨年度の採用は予定の51%と低迷。首相は近く関係閣僚会議を開き、自衛官の処遇改善に取り組む意向だ。立憲民主党や日本維新の会も対策強化を掲げる。
◇地位協定改定、野党積極
主要6党のうち、共産党を除く5党は一定程度の防衛力整備が必要との立場だ。3文書に基づく防衛力強化を訴える自民、公明両党だけでなく、立民も「新領域を統合した防衛能力の強化、継戦能力の向上」を提唱する。
ただ、43兆円の防衛費について、立民は「乱暴過ぎる」(小川淳也幹事長)と批判し、内容を精査すると主張。維新は防衛費の水準は認めつつ「安易な増税は反対」との立場。国民民主党も増税に頼らない財源確保を求める。
首相が自民党総裁選で訴えた日米地位協定改定、アジア版北大西洋条約機構(NATO)は、党内議論を経ていないとして自民公約に盛り込まれなかった。地位協定見直しは、立維共国4党が公約に明記したが、議論は深まっていない。
共産は「大軍拡」に反対し「包摂的な平和枠組みづくり」など外交強化を訴えている。
[時事通信社]
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