乏しい情報、消えぬ不安=通学再開も手探りの安全対策―男児刺殺事件1カ月―中国・深セン
【香港、北京時事】中国南部・広東省深セン市で登校中の日本人男子児童(10)が刃物で刺され死亡した事件は、18日で発生から1カ月となった。男児が通っていた日本人学校は通学を再開したが、中国側は依然として犯行動機を明らかにしていない。事件に関する情報は乏しく、児童や保護者の不安は払拭されていない。手探り状態の安全対策を余儀なくされている。
◇反日、景気低迷影響か
「在留邦人の不安が急速に高まっている」。外務省の岩本桂一領事局長は17日、北京で中国外務省の※(登にオオザト)励次官らと面会し、事件に関する説明を求めた。事件が起きた9月18日は満州事変の発端となった柳条湖事件から93年に当たる。反日感情を抱いた容疑者が日本人を意図的に狙った可能性を排除できない。しかし、中国側は司法手続きが進む中で日本側に説明すると言うだけで、情報開示に消極的だ。
中国では公共の場で無差別に人を切り付ける事件が多発している。9月に上海市のスーパーマーケットで男が周囲の人を刃物で切り付け、18人が死傷。今月8日には広東省広州市で男が児童ら3人に切り付ける事件が起きた。上海の事件は個人的な金銭トラブルの不満を解消するのが動機だったという。景気低迷による経済的な困窮が一連の事件に影響しているとの見方もある。
◇ランドセル使用自粛
事件後、オンライン授業に切り替えた深セン日本人学校は14日、対面授業を再開した。登校は、送迎バスや車の利用が基本。バスの路線を増やしたほか、配車アプリを使ってタクシーで送迎できる措置を取った。バス停には警備員を配置し、警備態勢も強化した。だが、保護者らからは「眠れない」「外に出るのが怖い」といった声が上がっている。学校側は、日本人と特定されることを防ぐためランドセルを使用しないよう呼び掛けている。
中国にある他の日本人学校でも安全対策に取り組んでいる。北京日本人学校は登下校時の警備員を増やした。以前は少し離れた場所で通学バスの乗り降りをしていたが、現在は校門前で行っている。日本人が多く住む北京のマンションでは、不審者が近寄るのを防ぐため敷地内に通学バスを乗り入れるようにした所もある。
[時事通信社]
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