2024-10-16 18:16政治

石破自民「裏金の闇」に背=使途・経緯なお未解明―選挙資金の指摘絶えず・「みそぎは済むのか」(1)【24衆院選】

 政界を大きく揺さぶった自民党の派閥裏金事件の全体像はいまだ不明で、新たな疑問も次々浮上する。真相究明を求める世論の高まりに、石破茂首相(同党総裁)は曖昧な態度を取り続ける。多くの闇に自民が背中を向けたまま、衆院選(27日投開票)が始まった。
 ◇「ある幹部」は誰か
 9月30日、旧安倍派の会計責任者に対する東京地裁の有罪判決は、パーティー券販売ノルマ超過分の処理について「派閥会長や幹部らの判断に従わざるを得ない立場」だったと認定した。
 6月の公判で会計責任者は、2022年4月に議員への超過分のキックバック(還流)廃止を決めた後、「ある幹部」からの要望を踏まえ、8月に塩谷立・元総務会長、下村博文・元政調会長、西村康稔・元経済産業相、世耕弘成・前参院幹事長の幹部協議で再開が決まったと証言。判決はこれを追認した格好だ。ただ「ある幹部」が誰なのかは解明されていない。
 塩谷氏を除く3氏は国会の政治倫理審査会で、幹部会合では再開は決まらなかったと説明。衆院解散の直前に行われた党首討論で、立憲民主党の野田佳彦代表は一連の公判を踏まえて再調査を迫ったが、首相は「必要があれば否定しない」と明言を避け、「裏金というのは決め付けだ」と開き直った。
 下村、西村、世耕3氏は衆院選に無所属で立候補し「みそぎ」を目指している。
 ◇中抜き
 自民は所属国会議員に実施したアンケートを基に、旧安倍派、旧二階派議員の政治資金収支報告書の不記載額を公表した。ただ、当時から党内では「アンケートでは把握できない裏金収入もあった」との指摘が絶えなかった。
 議員がパーティー券の売り上げを手元に残す「中抜き」が、判明分よりも大規模だった疑いがある。複数の政権関係者は、旧安倍派が22年春に還流廃止を決定したことで、「決定前にノルマ以上にパーティー券を売っていた議員側が超過分を大量に中抜きした」可能性に触れ、実態が明らかになれば立件対象の議員が広がっていたとの見方を示した。
 ◇地方議員にも
 自民は党内調査で、不記載分の違法な使用を否定した。しかし、その後に発覚した堀井学・元衆院議員(自民離党)の公職選挙法違反事件では、有権者に配った香典代に裏金が使われていた疑いが浮上。調査の信ぴょう性は揺らいでいる。
 先の通常国会の審議では、参院の旧安倍派で改選期を迎える議員が集めたパーティー券収入を全額還流する慣習が続いていた疑惑も浮かんだ。裏金が選挙に使われていたとの見方は根強い。自民の元衆院議員は「国政選のたびに地方議員からカネを要求された。地盤の弱い国会議員は地方議員の言う通りにするしかない」と話し、裏金が地方議員にも配られた可能性に言及した。
 ◇ ◇ ◇
 政権発足から戦後最短での衆院解散・総選挙で裏金事件の「みそぎ」は済むのか。「政治とカネ」の在り方を巡り、積み残された課題を探った。(3回連載)
 
 ◇「みそぎ」は政治不信に
 山本健太郎・北海学園大教授(現代日本政治)の話 自民党の派閥裏金問題への対応には二つのポイントがある。ルールを破った議員への処罰の不十分さと、法制度の抜け穴だ。
 世論の受け止めは厳しく、議員辞職しなければ納得されないレベルだったが、自民は39人を党規に基づいて処分しただけで終わらせた。岸田政権の対応を引き継いだ石破政権はスタート時点からずれており、それを前提に、衆院選を事件からの「みそぎ」の機会と位置付ければ有権者の怒りを買い、不信を深めるだろう。
 最初の処分が適切だったのかという部分から考え直さないと世論は受け入れない。こうした状況は来年夏の参院選まで続きそうで、党内基盤の弱い石破茂首相にとっては袋小路の状態になるのではないか。
 処分の甘さは、政治資金規正法の改正に自民が真剣に向き合うことでカバーできたかもしれない。しかし現状を見ればそれも悲観的だ。政策活動費を禁止しても、他の費目で計上することになるだろう。
 いかに透明性を確保するかが重要で、現在は政治家個人の資金管理団体のほか、政党支部、後援団体も事実上は全て政治家の「財布」となっている。連結決算のような仕組みを取り入れることや、デジタル化の徹底によって外部の目が行き届くようガラス張りの収支報告にしていくことが必要だ。 
[時事通信社]

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