問われる「公正確保」=藤田騎手引退で揺れる競馬界
女性騎手として中央競馬最多の166勝を挙げた藤田菜七子騎手(27)が、11日付で現役を引退した。騒動の過程で騎乗停止処分の要因となったスマートフォンなど通信機器の使用は、なぜ制限されているのか。
日本中央競馬会(JRA)は理念の一つに「公正確保」を掲げている。公営競技の根幹で、八百長の防止も重要な要素。騎手の外部との自由な接触は、意図的な出遅れやタイムロスなどレースの不正操作の温床となる可能性をはらむ。
JRAの場合、騎手はレース開催前日の午後9時までに「調整ルーム」と呼ばれる競馬場などの宿泊施設に入る。昨年6月からは通信機器の持ち込みも禁止となり、騎乗が終わるまで使用できない。部外者との接触を断つためで、疑われないよう努めることも責務となる。
ただ、スマホ世代の若手騎手を中心に違反が後を絶たないのが実情だ。コンプライアンス研修など倫理教育にも限界があり、JRAの松窪隆一審判部長は「短期間で事案が続いている。居室や持ち物の抜き打ち検査は当然必要になる」と私見を述べた。
金属探知機の設置や電波の遮断、調査の権限を強めるなどの方策もあるが、導入が現実的なのかは未知数だ。人気騎手の衝撃的な引退。「公正」を掲げる以上、JRA、騎手、調教師ら競馬界が一体となって襟を正す契機にしたい。
[時事通信社]
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