「変節」批判受け首相判断=裏金議員非公認、歓迎と反発―衆院選
世論の期待と党内融和の板挟みになっていた石破茂首相(自民党総裁)がようやく判断を下した。次期衆院選で「裏金議員」の比例代表との重複立候補を認めず、一部は小選挙区で非公認とすると表明。いったん原則公認に傾きつつも、「変節」批判に押され、当初の主張に立ち戻った。ただ、対象議員の政治生命を左右しかねない決定に党内の評価は割れ、石破政権は揺れている。
「退路を断って有権者の審判に委ねる。国民の納得と共感を求めたい」。首相は6日、裏金議員に厳しく対応する姿勢を記者団に強調した。
1日の政権発足後、首相が直面したのが裏金議員の公認問題だ。超短期の衆院解散・総選挙にかじを切ったことで、「十分な国会質疑」の約束などと合わせ、総裁選で非公認を示唆した発言のつじつまが早速問われた。政権基盤がもろい首相は党内の声を無視できず、当初は「石破カラーを出すと党内から怒られる」と漏らす場面もあった。
政権の滑り出しで首相は内輪の論理優先の判断を重ねる。衆院選前の予算委員会を拒否し、日米地位協定改定などの持論を所信表明演説で封印。野党から「うそつき」などの批判が噴出し、言行不一致を重ねれば、衆院選を目前に世論の失望が広がりかねない状況に追い込まれた。
公認問題を巡っては執行部内の意見も割れていた。「選挙は当選第一主義だ」と訴える森山裕幹事長に対し、小泉進次郎選対委員長は厳しい対応を主張。首相と、森山、小泉両氏の協議は3、5両日には結論が出ず、6日に1時間余り議論を重ねた末に首相がようやく判断した。
首相周辺は「有言不実行と言われ続け、首相がキレたということだ」と解説した。
党内では歓迎と反発の声が交錯した。小泉氏は6日の街頭演説で「自らに鋭いメスを入れなければならない」と意義を強調。閣僚経験者は「信頼回復に向けやむを得ない」と評価し、中堅議員は「裏金議員は比例復活しても『裏金ゾンビ』と言われるだけだった」と理解を示す。
これに対し、非公認となる旧安倍派の高木毅元国対委員長は福井県内で記者団に「会見し、政治倫理審査会にも出て、一定の説明責任は果たされたのではないか」と割り切れない思いをのぞかせた。旧安倍派内には「安倍派つぶしだ」などの反発が渦巻き、若手議員は「これで選挙結果が悪ければ『石破降ろし』だ」と息巻く。
首相は4月の党内処分の対象となった議員の多くに関しては「説明責任」などを基準に公認を判断するとしており、非公認の規模はなお定まっていない。立憲民主党の野田佳彦代表は記者団に「『相当程度が公認されない』という首相の言い方はミスリード。大半が公認される仕組みではないか」と挑発した。
[時事通信社]
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