オープンAI、1.6兆円確保=開発に巨費、脱NPO計画も
【シリコンバレー時事】生成AI(人工知能)「チャットGPT」を開発した米オープンAIが、今月に入り計106億ドル(約1兆6000億円)の巨額資金を確保したと発表した。さらにNPO(非営利法人)が監督する体制から転換し、資金を調達しやすくする計画も取り沙汰されている。こうした状況は、生成AIを動かす基盤モデルの開発競争がマネーゲームの色彩を強くしつつあることを浮き彫りにしている。
◇2億人超利用も赤字
オープンAIは2日、マイクロソフトやエヌビディア、ソフトバンクグループなどから計66億ドルを調達したと発表。翌3日には、JPモルガン・チェースなどから計40億ドルの融資枠を設定されたことも明らかにした。フライア最高財務責任者(CFO)は声明で「(確保した)融資枠は財務を強化し、将来の成長機会を捉える柔軟性を与える」と説明した。
チャットGPTは週2億5000万人に利用され、幅広い機能を使える有料版も提供。米紙ニューヨーク・タイムズによると、売上高は今年37億ドルに達する見込みだ。ただ、人件費や開発・運用コストで50億ドルの赤字という。
巨額調達の背景には、持続的な開発環境を整える意図がある。アンソロピックや実業家イーロン・マスク氏が率いるxAIといった競合他社も、数十億ドル規模の資金を調達した。高度な技術を備えた人材採用だけでなく、膨大なデータを学習し回答を示すための計算能力確保の必要性は高まる一方だ。
◇公益と両立課題
報じられているNPO統治から、営利企業主導への組織再編もこの文脈上にある。利益を追求しやすくするとともに、現行の投資家への利益分配上限を撤廃することで「投資のうまみ」を高め、さらなる資金を呼び込む狙いだ。
一方で、オープンAIは「人類の利益のためのAI開発」を掲げ創業。この理念から外れないようNPOが監督する役割を担ってきた。ただ昨年11月、アルトマン最高経営責任者(CEO)が一時解任されて以降、利益優先で安全対策を軽視しているとの批判が内部から出てきた。統治のもろさが露呈している。
組織再編後、NPOは存続するものの、その影響力は弱まることが予想されている。分配拡充を求める株主が圧力を強めた場合、公益と収益確保のバランスを保てるのか懸念もある。
[時事通信社]
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