「家族の通訳、支援の相談を」=ことばのヤングケアラー―当事者がNPO設立・前橋
外国出身で日本語を話せない家族のため、通訳を担う子どもたちがいる。「ことばのヤングケアラー」と呼ばれ、書類の翻訳や代筆などの負担も重い。当事者でパキスタン出身のアジズ・アフメッドさん(25)は昨年、問題提起のために前橋市にNPO法人を設立。「支援が必要なときは、周囲に相談を」と訴える。
アジズさんは2008年8月、群馬県内の工場で働く父親と暮らすため、母親らと一緒に来日。当時9歳で日本語は分からなかったが、小学3年生として通学を始めてから1年半後には日常会話が可能になり、両親の通訳を担うようになった。
小学生時代は日常会話の通訳だけでなく、家に届く税金関係の書類の処理や、父親が携帯電話を契約する際の通訳も担った。税金の支払い方法を役所に電話で問い合わせることもあり、「通訳や翻訳が自分の役目で、それをやらなければ家族の中に自分がいる意味がない」と考えていた。
中学生になると、負担はさらに増加。通訳などの対象は母親の友人にも及んだほか、来日後に生まれた弟や妹に関しても、学校の三者面談に参加し、通院に付き添った。アジズさんは当時について「風邪を引くと誰も何も頼まないから、風邪を引くことが好きだった」と複雑な心境を明かす。
「誰にも自分の気持ちは分からないと思い、苦しさを相談できなかった」。そんなつらい経験を基に、アジズさんは昨年8月、問題周知のためのNPO法人「共に暮らす」を立ち上げた。問題啓発のイベントを開くほか、日本語が話せない両親らに対し、子どもを学校に通わせる上で必要な情報提供などをしている。
アジズさんは「『ことばのヤングケアラー』は存在が知られていないだけで、助けを求める人や、助けようとしてくれる人は多い」と強調。「当事者の子どもたちは、周囲に少しでも頼れそうな人がいたら相談してみてほしい」と呼び掛けている。
[時事通信社]
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