米大統領選前に「成果」狙う=ネタニヤフ氏、軍事行動で支持回復―専門家
イスラエルが、パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとの交戦をきっかけにレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラへの攻撃も強め、中東情勢の悪化が懸念されている。専門家は、イスラエルのネタニヤフ政権が自国の安全保障環境を有利にするため、米大統領選の選挙戦中を狙って軍事作戦を展開し「成果」を挙げたと指摘している。
慶応大の錦田愛子教授(中東政治)は、9月に始まった大規模なレバノン攻撃について「2009年、オバマ米大統領(当時)の大統領就任直前に終わったイスラエルのガザ侵攻に近い面がある」と指摘する。ヒズボラ最高指導者ナスララ師の殺害といった大きな作戦は「米新政権発足以降に実施すれば反発が予想される」ため、選挙戦中に駆け込みで実施したとの見方だ。
また、錦田氏は、ハマスやヒズボラを支援するイランによるイスラエル攻撃を選挙戦中に引き出した点にも着目。「ハリス副大統領、トランプ前大統領の両候補にイスラエル防衛への支持を表明させる意図だった」と強調した。
イスラエル国内では、昨年10月のハマスによる奇襲を許したネタニヤフ政権への反感が高まった。しかし錦田氏は「(当時の)ハマス最高指導者ハニヤ氏、ナスララ師を殺害し、一定程度成果を出したことで支持率は回復している」と述べた。現地メディアが9月下旬に報じた世論調査結果では、ネタニヤフ首相は昨年12月に支持率で18ポイント差をつけられていたガンツ前国防相に対し、逆に11ポイントリードとなった。
イスラエルの攻勢について錦田氏は、レバノンと接する人口密集地のイスラエル北部に住民が帰還できるよう「ヒズボラのミサイル発射拠点や武器貯蔵庫をある程度破壊するまで続く」と予測。親イラン勢力「抵抗の枢軸」の一斉反撃には「やるなら(1日に)イランと共にやったのでは」と否定的な見方を示した。
[時事通信社]
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