9候補、原発活用で横並び=軌道修正も、依存度では温度差―自民総裁選
自民党総裁選では、デジタル化に伴う電力需要の増加やエネルギー安全保障の確保に対応するため、9候補が原発を活用する方針で足並みをそろえている。「脱原発」を掲げていた河野太郎デジタル相や小泉進次郎元環境相も原発容認へと軌道修正し、独自色は見えにくい。ただ、原発への依存度を巡っては候補者間で温度差がある。
東京電力福島第1原発事故後、政府は依存度を「可能な限り低減する」としてきたが、岸田文雄首相は政策を大転換した。老朽化した原発の建て替えや運転期間延長の方針を定め、「最大限の活用」にかじを切った。各候補者はおおむねこの路線を継承する考えだ。
高市早苗経済安全保障担当相や小林鷹之前経済安保担当相は、建て替えに加えて新増設にも積極的だ。2024年度中の改定を目指す「エネルギー基本計画」では、現行計画に明記された依存度低減の文言を見直すことを主張。原発の使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策の堅持も表明している。
自民では少数派の脱原発を主張してきた河野氏は一転、出馬に当たり原発再稼働の必要性に言及。「(電力需給の)前提条件が大きく変わった」と強調し、「原子力に関する技術と人材は国内で維持することが不可欠」と説明している。再生可能エネルギーを重視する立場だった小泉氏も、原発の建て替えや新増設について「選択肢を閉じることなく考えるべきだ」と話す。
背景には、社会のデジタル化に伴う電力需要の急増がある。全国の電力需給を調整する電力広域的運営推進機関によると、人工知能(AI)の急速な普及に伴うデータセンターの新設などで、33年度の最大需要は23年度比で537万キロワット上振れする見込み。規模は原発5基程度の出力に相当する。電力供給に支障が出れば経済活動の制約となりかねず、林芳正官房長官ら他の候補者も原発の重要性を強調する。
ただ、石破茂元幹事長は再エネの導入や省エネの徹底によって「原発のウエートを下げる」と原発依存に慎重な考えもにじませる。「原発の安全性を最大限に高めていかなければいけない」として、福島第1原発事故の教訓を重視する姿勢を見せる。
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