「不明の娘、見つかって」=流された住宅、祈る父親―大雨で川氾濫、石川・輪島
記録的な大雨から一夜明けた22日、石川県・能登半島の輪島市では不明者の捜索や住宅の後片付けが本格的に始まった。中学3年の娘を探す父親は「とにかく見つかって」と無事を祈った。
塚田川の氾濫により住宅が流された輪島市久手川町では、警察や消防による必死の捜索が続いた。上流から流され橋に引っかかったがれきの中には、家屋の柱や衣服が見えた。
安否不明となっている中学3年喜三翼音さん(14)の父鷹也さん(42)は「とにかく見つかってほしい。捜索に加わりたいが、見守ることしかできない」と唇をかむ。
鷹也さんは21日午前7時半ごろ家を出て、職場に着いた。近所の人から危険な状態だと聞き、1人で家に残る翼音さんに電話をした。翼音さんは2階にいたが、ビデオ通話の画面越しに、家の周りが茶色の水面に覆われているのが見えた。脱出が不可能だったため部屋に残るよう伝えたが、同10時には電話がつながらなくなった。
急いで帰宅しようとしたが、道路が冠水して思うように進めず、車は途中で乗り捨てた。午後1時半ごろ徒歩で戻ったが、自宅は1階の基礎部分を残し消えていた。「家を出る時には水位を確認した。数時間でこんなことになるなんて」と流れ続ける濁流をにらんだ。
中学では美術部の部長を務め、絵を描くのが好きという翼音さん。鷹也さんは「本当に明るくて、優しい子。帰ってきてほしい」と言葉を振り絞った。
輪島市宅田町では、川の氾濫に伴い、能登半島地震の仮設住宅に床上浸水の被害が出た。地震で妻を亡くし仮設住宅に一人で暮らす柿本義治さん(83)は「避難先の金沢市から5月に戻った。やっと落ち着いてきたのに、踏んだり蹴ったりだ」と肩を落とした。
長男の義浩さん(57)は「ここは商業施設や病院が近く、決まった時は御の字だと思った。海抜が低く心配だったが、まさか氾濫が起きるとは」と話す。「あすまでにどこまで片付けられるか」と途方に暮れた。
[時事通信社]
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