中小企業、採用・育成を共同で=広がる「地域の人事部」―国が後押し、自治体主導も
地方の中小企業で人手不足が深刻化する中、地域内の企業が共同で採用や人材育成を行う取り組みが全国的に広がっている。経済産業省が「地域の人事部」事業として主導し、専属の人事担当者がいない企業の人材確保策などを支援。関係機関が連携を深める中で、地方自治体が積極的に支援に乗り出す動きも出ている。
全国有数の温泉地として知られる神奈川県箱根町。観光客向けの宿泊施設や飲食店が立ち並ぶが、こうした職場の離職率は相対的に高く、働き手の確保に悩む事業者が多い。
そうした中、箱根町観光協会が中心となり、2022年度から「地域の人事部」の活動がスタート。現在は宿泊関係の事業者など27社が参加している。柱となるのは採用ウェブページの一本化だ。23年度に開設した「はこワク!」には、参加事業者の求人情報や社員紹介を無料で掲載。箱根町役場のホームページを通じた閲覧も可能で、求職者の目に付く機会を増やす工夫をしている。
観光協会の佐藤守専務理事は「人が足りないという共通の問題がある中、地域全体を一つの会社と見立てた」と語る。協会では新たな取り組みとして、外国人の採用に関する意見交換会を8月に開催。技能実習生らの採用に向け、課題や具体的な対応策を議論した。
こうした取り組みを通じて、温泉宿泊施設「然」は外国人を1人採用。佐藤直樹支配人は「地域の人事部がなければ雇うことはなかった」と手応えを感じている。
経産省は、箱根町観光協会のような取り組みを後押しするため、必要経費を補助する制度を導入。働き方改革を推進する企業を対象にした特別枠を創設し、人材の定着も図っている。
ただ、「支援」からいかに「自立」につなげるかが課題で、箱根町観光協会の場合は関係団体からの支援や企業からの参加費徴収で活動継続を目指す意向だ。
自治体の中には持続的な支援を視野に、率先して取り組みを後押しする動きがあり、山口県下関市では市が主導して協議会を設置。27年度に企業中心の活動に移行することを目指し、セミナーの開催費用などを負担している。
市の担当者は「正式に動き始めた後でもサポートが必要になる。持続的な支援となるよう検討する」と話している。
[時事通信社]
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