先輩大関を圧倒、2度目賜杯=大の里、余韻に浸らず―大相撲秋場所
1年前から看板力士の座を担ってきた先輩に強さを見せつける完勝だった。大の里はもろ手から攻めて豊昇龍の体勢を崩すと、一気に前に出て土俵の下にはじき飛ばす。「思い切ってやるだけだった」。歓声と拍手の中、控えめにうなずいた。
相撲を取った時の対戦成績は過去3戦全敗。互いに得意の右四つに組んでは、前に出たところで下手投げを食ってきた。「立ち合いと土俵際を意識した」。これまでの苦い黒星を糧とし、大関に付け入る隙を与えなかった。
9勝にとどまった7月の名古屋場所。2場所連続優勝なら大関昇進もあるかという期待に応えられなかった悔しさは、深く胸に刻まれた。
自らに言い聞かせるように支度部屋で「目の前の一番に集中」と繰り返した今場所。土俵上での抜群の動きの良さに最後まで重圧は感じさせなかった。「先場所の反省が生かせた」。高田川審判部長(元関脇安芸乃島)は昇進に向け、「最高の流れじゃないか」と太鼓判を押した。
涙を流し、初優勝の喜びに浸った5月の夏場所。この日は一転して涙もなく、「まだ15日間終わっていない。しっかり勝って締めて、師匠にいい報告がしたい」。淡々と語る表情には、勝ち続ける責任が伴う地位に立つ自覚が垣間見えた。
[時事通信社]
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