中国、水産物禁輸で「誤算」=風評被害で反発拡大
【北京時事】中国政府が福島第1原発の処理水放出を理由に禁輸措置を講じた日本産水産物の輸入を段階的に進める方針を示した。禁輸で対日関係が悪化した上、中国国内では水産物に対する風評被害の拡大により、漁業者が反発を強める「誤算」を招いた。政府は対日交渉を急ぎ、事態収拾を図りたい考えだ。
「中国は科学的な事実に基づき政策を調整する」。中国外務省の毛寧副報道局長は20日の記者会見でこう強調した。「すぐに日本産の輸入を全面再開するわけではない」と説明したものの、日本政府関係者は「中国は問題解決を急いでいる」と打ち明けた。
中国は禁輸措置を当初、対日外交で優位に立つための「カード」と位置付けていた。だが、処理水を「核汚染水」と主張する中国に同調する国はロシアや北朝鮮など少数。一方、台湾は輸入規制の緩和を決めた。
こうした中、日本の対中感情は急速に悪化。今月18日には広東省深セン市で日本人男児が襲撃され、死亡する事件も起き、日中関係がさらに冷え込むとの懸念が広がった。香港メディアは処理水問題を巡り、日中関係の安定が「地域の発展につながる」とする専門家の見方を伝えた。
国内経済への打撃も想定を超えた。当局は流通する海産物に独自の厳格な放射性物質検査を行っているとアピールしてきたものの、水産物を忌避する消費者は多く、SNSには「収入が激減した」といった漁業者の悲痛な声があふれた。景気低迷で国民の当局に対する不満が広がっていることも、今回の合意につながった可能性がある。
[時事通信社]
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