日銀総裁、利上げに「時間的余裕」=物価上振れリスク低下、判断急がず―政策金利は維持・決定会合
日銀は20日の金融政策決定会合で、政策金利である短期金利の誘導目標を現状の「0.25%程度」に据え置くことを全員一致で決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で「政策判断に当たって時間的な余裕はある」と述べ、追加利上げを急がない考えを強調した。歴史的な円安水準の修正に伴い「物価上振れリスクは相応に減少している」とし、当面は先行き不透明な米国経済の動向などを慎重に見極めていく姿勢を示した。
日銀は前回の7月会合で、3月のマイナス金利政策解除に続き、今年2回目の利上げを決定。その後、米景気後退懸念が重なり、株価や円相場が乱高下した。植田氏は金融市場の動向について「引き続き不安定な状況にある」と説明。その上で「当面は極めて高い緊張感を持って注視し、経済・物価の見通しに及ぼす影響をしっかりと見極める」との意向を示した。
一方、植田氏は利上げ路線を堅持する方針も表明。「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、金融緩和の度合いを調整する」と語った。さらに、経済・物価動向は2%の物価上昇目標の持続的・安定的な実現に向けて「見通しに沿って推移している」と話した。
ただ植田氏は、利下げ局面に入った米国経済が景気後退を招かずにインフレが沈静化する「軟着陸(ソフトランディング)」に向かうのか不確実性は高いと分析。年内利上げについて「直ちに見通しの確度が高まり、すぐに利上げということにはならない」と指摘した。
会合後に公表した声明文では、国内景気は「一部に弱めの動きも見られるが、緩やかに回復している」との判断を維持し、個人消費は前回の「底堅く推移」から「緩やかな増加基調」へ上方修正した。植田氏は「賃金が着実に上昇し、所得環境の改善が続いている」として、消費下支えの効果に言及。来年の春闘については「企業収益が好調で、しっかりとした賃上げが期待できる」との見通しを示した。
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