財政運営に温度差=金利復活でも具体策乏しく―自民総裁選
自民党総裁選で、財政の立て直しに向けた議論は停滞している。日銀が3月に異次元の金融緩和政策からの転換に踏みだして以降、「金利のある世界」が復活。今後は、国の借金である国債の利払い費が財政を一段と圧迫していく方向にある。岸田政権は新型コロナ対策で膨張した財政の「平時回帰」を掲げたが、財政運営に関する9候補の考え方には温度差が目立ち、具体策に乏しい。
国と地方の借金残高は1300兆円を超え、国内総生産(GDP)の2倍以上に達している。財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は2025年度に初の黒字転換が見込まれるが、大型の補正予算を編成すれば達成は難しくなる。
財政健全化を重視するのは河野太郎デジタル相。「金利が徐々に上がっていく中で、規律ある財政を取り戻す」と訴える。石破茂元幹事長も、南海トラフ地震や台湾有事を念頭に「有事に備える財政」を提唱する。ただ、財政規律を語る候補は少数派だ。
日本経済はデフレ脱却が視野に入る一方、円安に伴う物価高が国民生活を圧迫しており、多くの候補は財政より経済対策や成長戦略を前面に出す。
安倍晋三元首相の「アベノミクス」を継承する高市早苗経済安全保障担当相は、「積極的な財政出動をやり、金融緩和を我慢強くやらなければ、元のデフレ状態に後戻りだ」と強調する。日銀の利上げも「はっきりと早い」と否定的だ。
「増税ゼロ」を打ち出した茂木敏充幹事長は、岸田政権が決めた防衛増税と子育て支援金の追加負担をなくすと宣言。小林鷹之前経済安保担当相も「今はアクセルを踏むときだ」との考えだ。
物価高対策の早期策定に意欲を見せる小泉進次郎元環境相は「機動的な財政政策はしっかりやらなければならない。硬直的なことは良くない」と話す。
経済成長と財政健全化の両立を目指す候補もいる。林芳正官房長官は「金利がプラスの世界に戻ってきたことに緊張感を持つべきだ」と指摘。上川陽子外相は「成長を促す財政強靱(きょうじん)化」を唱え、加藤勝信元官房長官は「財政健全化を念頭に置くが、常に最優先ではない」と語る。
[時事通信社]
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