桂田社長「船に詳しくない」=宿泊施設の経営も―知床観光船事故
北海道・知床半島沖で2022年4月、26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故で、業務上過失致死などの容疑で逮捕された運航会社「知床遊覧船」社長の桂田精一容疑者(61)は宿泊施設を経営する傍ら、16年に同社社長に就任。逮捕前の取材に「私は素人で、船に詳しくない」と話していた。
第1管区海上保安本部は、桂田容疑者には出航を中止し、航行継続を中止する義務があったのに怠ったとして逮捕に踏み切った。知識の有無にかかわらず運航管理者としての立場を重視したとみられる。19日に釧路地検に送検し、事故に至る詳しい経緯を調べる方針。
運輸安全委員会の報告書などによると、桂田容疑者は斜里町ウトロ地区で複数の宿泊施設を経営していたが、知床遊覧船前社長の引退を受けて16年5月、社長に就任。コロナ禍で客足が遠のき、資金繰りが苦しくなったため、20年秋の営業期間終了後、実質的に運航管理者の職に当たっていた従業員や、経験豊富な船長らを雇い止めにした。
その後、21年3月に自らを安全統括管理者兼運航管理者に選任したが、3年以上の実務経験など必要な資格は持っていなかった。届け出を受理した北海道運輸局は十分なチェックをせず見逃していた。
運輸安全委の調査に対し、桂田容疑者は過去の経験豊富な船長とのやりとりを踏まえ、「運航は船長の判断に任せておけばよいと思った」と供述。23年に時事通信の取材に応じた際は、甲板下の浸水拡大を防ぐ隔壁に穴が開いてなければ沈まなかったと持論を述べる一方、「(穴が)開いていたことは把握していない」と語っていた。
桂田容疑者を知る関係者は「船を見て、どこが悪いとか分かる人ではない。運航管理者なんかになれる人じゃない」と批判した。
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