民事訴訟では責任転嫁=桂田容疑者、事故当初は謝罪も―知床観光船事故
北海道・知床半島沖での観光船「KAZU I(カズワン)」沈没事故で、乗員乗客の安全確保義務を怠ったとして逮捕された運航会社「知床遊覧船」(斜里町)社長の桂田精一容疑者(61)に対しては、民事上でも犠牲者遺族らによる責任追及が続く。同容疑者は事故直後に謝罪を口にする一方、訴訟では死亡した船長らへの責任転嫁とも取れる主張をしている。
「最終的な判断は私がした」。桂田容疑者は、事故4日後に開かれた記者会見で初めて公の場に姿を現し、事故当日の出航判断のミスを認めて土下座した。ただ「天気予報を見ても問題はなかった」などと釈明する場面もあった。
運輸安全委員会は2022年12月、沈没の要因として、船体のハッチの不具合や甲板下の隔壁の穴を指摘。桂田容疑者は23年に取材に応じた際、「(不具合は)把握していない。私は素人で船にはそれほど詳しくない」と話し、出航判断の是非についても「お答えは難しい」と明言を避けた。
同年3月、犠牲となった甲板員の男性=当時(27)=の遺族が、約1億1900万円の損害賠償を求めて桂田容疑者と同社を提訴したが、同容疑者側は「出航を判断したのは船長であり、運航中に引き返していれば事故は回避できた」などと主張し、棄却を求めた。
遺族側の訴訟資料によると、桂田容疑者側は和解案として、月5万円ずつ、130年以上をかけて計8000万円を支払うことを提案。しかし遺族側は「常識を外れた超長期の分割。どのように支払いを継続するのか」と困惑した様子を見せた。
今年7月には、乗客14人の遺族ら29人が桂田容疑者などに約14億9900万円の損害賠償を求めて札幌地裁に提訴した。第1回口頭弁論はまだ開かれておらず、同容疑者側の主張は明らかになっていない。
[時事通信社]
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