戦略家、行動力も=渡辺氏「最大、最後の挑戦」―IOC会長選
IOC会長選に日本人で初めて挑む渡辺守成氏のライバルは、いずれもスポーツ界で名だたる者ばかり。コー氏は陸上の元スター選手で、サマランチ・ジュニア氏は長期政権を築いたかつてのIOC会長の息子だ。
流通大手ジャスコ(現イオン)で長くサラリーマン生活を送り、アスリートとしての輝かしい実績や強固な人脈はなかった。それでも、国内外で要職を務めて経験を積んだ。最大の強みは、ビジネスマンとして培った巧みな戦略と行動力にある。
東海大時代まで体操競技を続け、ブルガリア留学で新体操に出会ったことが転機になった。帰国後は競技の普及に尽力し、日本体操協会幹部として当時の会長を支えた。2013年に国際体操連盟(FIG)理事に就任。世界を飛び回って顔を売り、17年には欧州以外の出身で初めてFIG会長に選出された。その手腕を高く評価したバッハ会長の誘いを受け、18年に国際オリンピック委員会(IOC)委員となった。
「中学生レベル」と謙遜する英語を駆使し、北朝鮮やロシアの関係者とも単身で渡り合う。昨年のIOC総会では五輪憲章を改訂してバッハ氏の続投を望む声が委員から相次ぐ中、現行制度を守る重要性を一人説いた。
バッハ氏は結果的に憲章の改訂へ動きだすことなく、任期満了での退任を選んだ。総会後、今回の会長選に名乗りを上げたライバルたちからは「よくぞ言ってくれた」と感謝されたという。
体操界では富士通と組み、人工知能(AI)を使った採点補助システムの導入を図るなど、革新的な取り組みも恐れない。さまざまな思惑が交錯し、魑魅魍魎(ちみもうりょう)うごめくIOCトップの座。渡辺氏は「人生で最大、最後の挑戦」と意欲に燃えている。 (時事)
[時事通信社]
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