岸田首相が解決指示もめど立たず=県や市、早期救済求める―被爆体験者問題・長崎
国が定める被爆援護対象区域の外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」を巡っては、当事者や被爆者団体が長年にわたり、被爆者と同様の援護措置を国に要求してきた。岸田文雄首相は8月、「早急な解決」を武見敬三厚生労働相に指示したが、直後に退陣を表明。当初は同月中に予定されていた国と長崎県、長崎市による協議も白紙となり、解決のめどは立っていない。
長崎の援護対象区域は、原爆投下当時の行政区域を基に指定されたため、南北に細長い形となっている。区域外の住民や地元自治体からの拡大要望を受け、国は2002年、爆心地から半径12キロ以内で区域外にいた住民を対象に「被爆体験者支援事業」を開始。ただ、放射線による直接的な健康被害を認めない姿勢は維持したため、医療費の支給対象を被爆体験による精神疾患などに限定した。被爆者だと特定の疾病にかかっていれば支給される健康管理手当(現行月額3万6900円)も認めなかった。
国から事務を任され、被爆者健康手帳を交付してきた長崎県と長崎市も、訴訟以外の場では被爆体験者の早期救済を国に強く求めてきた。要望を踏まえ、23年度からは医療費の支給対象に7種のがんが新たに加わったものの、依然として被爆者との格差は大きい。長崎市の鈴木史朗市長は「被爆体験者は高齢で、救済は一刻の猶予も許されない」と強調する。
被爆地広島を地盤とする岸田首相は今年8月9日、長崎市での平和祈念式典出席後に被爆体験者と面会。その際「早急に課題を合理的に解決できるよう、対応策を調整するように」と同席した武見厚労相に指示した。ただ、その5日後には自民党総裁選不出馬を表明。首相指示を受け、厚労省は県や市と救済策について協議を進める方針だが、具体的な方向性は定まっていない。
[時事通信社]
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