自民総裁選公約、早くも論争=確定申告や金融所得課税―財政規律には及び腰
自民党総裁選で「ポスト岸田」候補が打ち出す公約が論争を招いている。各陣営とも岸田政権との違いをアピールしようと苦心する一方、少子高齢化に伴う社会保障制度のひずみや、悪化の一途をたどる財政への対応策は置き去りとなっている。
「最終的に年末調整をやめる。すべての確定申告が自動で入力され、ボタンを押せば申告が終わる」。河野太郎デジタル相(61)は5日の政策発表で、将来的に全納税者が確定申告する仕組みへの移行を打ち出した。行政と民間データの連携により、ピンポイントの給付金支援などが可能になると説明した。
インターネット上では「利便性が向上する」との声がある一方、「この仕組みで裏金づくりはなくなるのか」「税務署の負担が増し現場が混乱する」といった批判も続出している。河野氏はX(旧ツイッター)で働き方改革にも触れ、スタートアップ(新興企業)限定で長時間労働規制を緩和するなど、「真に自らの意思で、思う存分働ける改革も必要」と訴えた。
茂木敏充幹事長(68)も同日発表した「政策ビジョン」で、防衛力の抜本的強化のための増税や、少子化対策の財源として公的医療保険料に上乗せ徴収する支援金を停止する方針を改めて説明。いったんは存続を決めた政策活動費の廃止も盛り込んだ。ただ党内からは「議論をリードしてきた幹事長が言うことか」との反発が続出。他候補からも批判が上がる。
金融所得課税の強化も争点に浮上している。石破茂元幹事長(67)は3日、新NISA(少額投資非課税制度)、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)は対象外だと前置きした上で、富裕層への課税強化については「公正な税制を実現する手法はいろんな議論がある。これから検討すべきだ」と指摘した。これに対し河野、茂木両氏や小泉進次郎元環境相(43)、小林鷹之前経済安全保障担当相(49)は否定的な見解を示した。
ただ急速な人口減少や緩んだ財政規律への対応については、各候補とも踏み込み不足だ。河野氏は公約で「規律ある財政を取り戻す」と説明。茂木氏も「年齢区分から負担能力」を重視する方針を示しているが具体策に乏しい。派閥裏金問題への対応に注目が集まる中、「総裁になった先のことを真剣に考えているのか」(ベテラン)との懸念も上がっている。
[時事通信社]
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