企業の内部留保、600兆円=12年連続で過去最高―投資や人件費、活用に課題・23年度末
財務省が2日発表した法人企業統計調査によると、企業の利益から税金や配当を差し引いた「内部留保(利益剰余金)」は2023年度末に600兆9857億円となった。600兆円を超えたのは初。好調な企業業績を背景に12年連続で過去最高を更新した。一方、設備投資や人件費の伸びは小さく、景気の好循環に向け、積み上がった内部留保の活用が課題となっている。
23年度の内部留保は前年度比8.3%増と、17年度以来の高い伸びだった。経常利益が初めて100兆円を超え、106兆7694億円と過去最高額を更新したことが寄与した。手元の現金・預金も2.3%増の301兆8073億円と、初めて300兆円に達した。
08年のリーマン・ショック以降、企業の設備投資や人件費への資金投入の動きは鈍りがちで、不況に備えて手元資金をため込む動きが進んだ。内部留保と現金・預金残高は08年度と比べてそれぞれ約2倍に膨らんだ。
一方、人件費は1990年代半ば以降は200兆円前後で推移。23年度は3.4%増の約221兆円と3年連続プラスになったが、内部留保と比べると伸びは限定的だ。設備投資額も23年度は5年ぶりに過去最高を更新したが、18年度と比べて5%弱の増加にとどまる。
財務省は増加が続く内部留保について「構造的賃上げとして労働者に分配し、消費や投資も伸びる経済成長につなげる好循環が重要だ」(担当者)と強調する。
大和証券の鈴木雄大郎エコノミストは、日銀の統計などによると24年度は積極的な設備投資が予定されていると指摘。思い切った賃上げを行う企業が増えていることもあり、「(ため込んだ)現預金を使った賃上げを行うことも考えられる」と述べ、膨らんだ内部留保の活用に期待感を示した。
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