周辺海域、異常確認されず=原発処理水放出から1年―中国なお禁輸・東電福島第1
東京電力福島第1原発にたまった処理水の海洋放出開始から24日で1年。これまでにおよそ6万トンが放出された。政府と東京電力ホールディングスの分析では、周辺海域で安全基準を超える異常値は確認されていないが、中国は日本の水産物輸入を停止したままで、禁輸措置の撤廃が課題となる。放出完了には30年程度かかる見通しだ。
全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長は23日、斎藤健経済産業相を経産省に訪ね、「日本の水産物は大変な被害を受けた。輸出が戻ったわけではなく、中国の対応はわれわれではどうしようもない」と、禁輸措置撤廃へ外交努力を要請した。
国際原子力機関(IAEA)は放出開始後、現地調査を2回行い、放出は「国際安全基準に合致している」との見解を示した。政府はIAEAの評価も支えに科学的な安全性を訴え、中国に禁輸措置の即時撤廃を繰り返し求めてきたが、実現は見通せていない。
禁輸が響き、日本の2024年1~6月の農林水産物・食品の輸出額は前年同期比1.8%減の7013億円と、上半期として4年ぶりに減少。東電は、販路を失った漁業者らへの賠償額を約753億円と見積もる。
放出作業を担う東電では22日、原発事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を試験的に初めて取り出す作業が手順ミスで中止となった。斎藤氏は坂本氏との会談で「東電に対しては緊張感を持って必要な対応を講じるよう指示した」と説明した。その上で、処理水の放出は「福島の復興と廃炉を着実に進めていくために避けては通れない」として、「今後数十年にわたろうとも、処理水の処分が完了するまで政府として責任を持って取り組んでいく」と述べた。
政府と東電は昨年8月24日、福島第1の廃炉作業に必要なスペースを確保するには敷地内に並ぶ処理水の保管タンクを減らす必要があるとして、漁業者の反対を押し切る形で処理水放出を始めた。
[時事通信社]
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