船舶エンジン、相次ぐ不正=現場で長年「伝承」も
船舶用エンジンメーカーの間で、試運転の際に燃料消費率に関するデータを改ざんする不正が相次ぎ見つかった。各社とも不正は数十年に及び、背景に「不適切な行為でも『伝承』してしまう組織風土」(IHI)を挙げる声もある。国土交通省の要請を受けて他のメーカーも調査に乗り出しており、不正がさらに広がる可能性がある。
IHIは21日、子会社によるデータ改ざんが約50年前の1970年代に始まったと発表した。従来は80年代後半と説明していた。これに伴い、対象エンジンも4905台から6831台に膨らんだ。
IHIでは2019年に旅客機エンジンの整備不正が発覚し、再発防止に取り組んでいる最中だった。今回は従業員の申告で明るみに出たが、大多数は「大問題になることが分かっており、言い出せなかった」ことから発覚が遅れたという。
日立造船の2子会社では、1999年以降に出荷した1364台のエンジンで改ざんが判明した。川崎重工業は2000年以降に起工したタンカーや大型貨物船に搭載された673台で不正を確認。折しも海上自衛隊員への接待疑惑を受け、「うみを出し切る」(橋本康彦社長)として全事業を調査し始めたタイミングだった。
いずれの社も、不正による船舶の事故などは起きていないとしている。一方で、IHIでは一部のエンジンが環境に影響を及ぼす窒素酸化物(NOx)の規制値を逸脱。日立造船なども同様の可能性があるとして調べている。
不正の理由は各社とも「燃費を仕様の許容値に収めたり、データのばらつきを抑えたりするため」とおおむね共通している。国交省はIHIと日立造船の例を受け、船舶用エンジンメーカー19社に対し、不正の有無を調査して9月末までに報告するよう要請した。現時点で報告したのは川崎重工のみで、残り18社の回答を待っている。
[時事通信社]
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