訪日客「二重価格」は差別?=観光施設、維持費確保で浮上
訪日外国人数が過去最高ペースで増加する中、観光施設などで訪日客の入場料を住民より高く設定する「二重価格」を検討する動きが広がっている。既に飲食店では導入例があるが、世界遺産の姫路城などでも浮上。背景には訪日客の急増により、各地で観光資源の維持管理費の確保などを迫られている事情もある。ただ、専門家からは安易な導入は差別につながるとの指摘が出る。
「市民と外国から来られる方とは、2種類の料金設定があってもいいのではないか」。兵庫県姫路市の清元秀泰市長は6月、「白鷺城」の愛称で知られる観光名所、姫路城の入城料についてこう言及した。2023年度に同城を訪れた観光客は約148万人で、うち外国人が3割強。全体では前年度の約1.5倍だったが、外国人は約4.5倍に急増した。
清元氏は「多くの人が登ると天守閣が傷む」と心情を吐露した。建物の維持管理や地震などに備えた安全対策の財源は必要だが、住民税を負担し、日頃から清掃ボランティアなどにも参加している市民の負担増は避けたい。一案として外国人30ドル、市民5ドルとする考えを示した。これに大阪府の吉村洋文知事も「大賛成。大阪城でもやったらいい」と述べている。
海外の観光施設で「二重価格」は少なくない。インドの「タージマハル廟(びょう)」はインド人と外国人観光客との価格差が22倍。エジプトの「ギザのピラミッド」や、カンボジアの「アンコールワット」も導入済みだ。日本でも、東京・渋谷の海鮮居酒屋が、日本人か日本在住の確認でコース料金から1100円を割り引いている。
ただ、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」の運営会社が2月に利用者を対象に行った調査では、導入反対は約4割と賛否は分かれた。観光政策に詳しい立教大学の西川亮准教授は、「単純に日本人と外国人の区分で価格を変えると差別や偏見を生む可能性がある」と指摘。ガイドツアーなど価格差に見合ったサービス提供が必要との認識を示した。
森トラストの伊達美和子社長は、観光施設は住民税などさまざまな税収に支えられているとし、今後は「住民への割り引きや教育的な観点から小学生は無料にするといったスタイルになるのでは」と推測する。
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