船上勤務、海保が「カイゼン」=委員会設置、働き方改革進める
官民で働き方改革が進む中、「船乗りなら当たり前」とされてきた環境の改善に、海上保安庁が取り組んでいる。昨年10月には業務体制を見直すための通称「カイゼン委員会」を設置した。担当する鈴木輝大・新技術活用推進官は「見過ごされてきた不便を変えたい」と意気込む。
船上生活特有の問題とされるのが電波の制限だ。乗組員は1週間以上洋上にいることも多く、勤務時間外も船で過ごす。近年はスマートフォンが生活インフラの一つになったこともあり、電波がつながらないことが乗組員にとって大きなストレスになっているという。
海保の船舶は業務用の衛星通信を備えているが、これまでは通信料が高く、私的利用が禁じられてきた。しかし、通信料が安くなったことに伴い、最近は一部でテキストメールに限って私的利用を許可している。「予算の制約はあるが、新しい衛星通信サービスの導入も検討したい」と鈴木氏は語る。
停泊中の当番勤務も大きな負担となっている。衛生管理や武器の保管のため、交代で船にいる必要があり、うまく休めずに家族との時間が取れない乗組員が少なくないという。このため退職者を再雇用して勤務に当たってもらうことを検討しており、貴重な陸上での休日確保につなげたい考えだ。
委員会発足時には、さまざまな要望が約800件集まった。「会議の議事録作成が若手職員の長時間労働の一因になっている」との意見を受け、機密情報の取り扱いに配慮した議事録の自動作成ソフトを導入したケースも。船上勤務に限らず、あらゆる場面で就業環境の改善を図っている。
取り組みの背景には、離職率の増加や志望者の減少による人材確保への危機感がある。鈴木氏は「社会の変化に合わせて組織も変わることで、国民の期待に応え続けたい」と語った。
[時事通信社]
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